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第20回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

第20回全国短歌フォーラムin塩尻(一般の部)入賞作品を掲載します!!

自由題 最優秀賞(1首)

  • 夏の夜に兄の回した幻灯機ふすまの上をアリスと旅した
    神奈川県川崎市 江國 梓

自由題 特別賞(1首)

  • 頑張りをそれぞれの節に溜めている木の根の如き吾が手を撫でる
    三重県伊賀市 出後 幸子

自由題 優秀賞(4首)

  • 八百メートル泳ぎ切つたり台に立つ八十六歳そつと微笑む
    長野県塩尻市 近藤 武夫
  • 今日もまた幼き命消されしと聞きて加わる防犯の列
    広島県東広島市 児山 浩子
  • 仲間みな焼酎づけとなりし今葉陰に黄ばむ梅の実ひとつ
    長野県高森町 北原 政利
  • 媼らの襁褓つぎつぎ取替へて青年介護士さりげなくゆく
    長野県塩尻市 百瀬 正子

自由題 佳作(5首)

  • 結婚をしない女孫は黒帯三段見合い写真に空手の所見見す
    山梨県笛吹市 関口 春江
  • 代掻をすれば近よるわが友よ長き尾振り振り背黒鶺鴒
    長野県諏訪市 百瀬 嘉一
  • 沖縄の惨禍をまなび孫たちが旅終え帰る日雪はしんしん
    長野県大町市 宮尾 光雄
  • 生くる者みなくろぐろと影曳きて夏空の下墓地より帰り来
    愛知県名古屋市 米山 貴美子
  • 老い二人背負い上げ来し桑の葉を六万匹がざわめきて喰む
    長野県松川町 山崎 圭子

自由題 入選(10首)

  • デーサービス老婆初恋語りいてしきりと聞こゆカッコー鳴く声
    長野県長野市 小松 安和
  • あたらしき命をしかと抱きてゐる授乳の嫁はしっとりと母
    千葉県館山市 高野 伊津子
  • 島を返せ太き文字の見ゆる野に海峡の霧湧きて流るる
    北海道別海町 長尾 和美
  • キラキラと輝きし日はなかりしがダイヤモンド婚を祝はれてをり
    宮城県仙台市 小松 久仁子
  • 「田舎銀座」と言われし昔今は無くポツンと残る吾が店の一灯
    長野県塩尻市 成田 実枝子
  • 今日学徒征きたる日なり胸あつく九条はいま風に揺れおり
    長野県諏訪市 野明 芳
  • 地下足袋は六枚鞐(こはぜ)日盛りもきびきび働く茶髪の庭師
    長野県宮田村 新谷 秀子
  • 握手するこれが最後と言ふ君を仙台駅で見失ひたり
    青森県三沢市 石橋 澄子
  • 作業終へ鎌を洗へばあした刈る土手の青草風に波打つ
    愛知県豊橋市 鈴木 昌宏
  • 無念さを嚙みしむごときリズムもち夫がリハビリの足音つづく
    長野県松本市 田中 靜子

自由題 奨励(43首)

  • 駒ひきて糧を運びし幾世代権兵衛隧道みやまつらぬく
    長野県塩尻市 宮原 文江
  • 曾祖父の桔梗が原の開拓の地たわわに実るぶどう郷と化す
    山梨県甲府市 中西 知恵能
  • 肺気腫で路上に屈む夫の背に労るごとく春の陽は差す
    長野県伊那市 御子柴 錦
  • 跡つぎと決まり許したトラクターの屋敷田起こす婿を見まもる
    長野県佐久穂町 高見澤 博一
  • 切迫流産の長き患(うれ)ひを撥ね除けし3120グラムの初孫を抱く
    東京都昭島市 森田 美江子
  • 九十になりても野良へ出向く母苗植える手は未だ軽やか
    長野県塩尻市 手塚 とよ子
  • 治るよね食事の度に病床の夫に呟き胃に管通す
    長野県中野市 塚田 幸子
  • 腹の癌切除せし身は帰り来ぬ鉄ぽう百合白く群れ咲く庭に
    東京都調布市 矢農 リン
  • 残したる夫のパジャマを纏ひ寝るあの日のやうにねむりたいから
    新潟県十日町市 関口 京子
  • 闇に浮くほたる袋の仄明かり昔むかしは皇子も夜這いす
    群馬県館林市 本川 ミヤ子
  • 兄戰死八月八日近づきぬ洗う碑に顕つ行年二十歳
    長野県麻績村 宮下 喜和枝
  • 人影も車も消えて仮設住宅(かせつ)五棟しろつめくさのなかに静もる
    新潟県柏崎市 神林 敏夫
  • 堆肥撒くゴム手を脱ぎて剥く桃のしずくしたたる畦草の上
    大分県大分市 首藤 忠
  • つばくろの雛の声する軒陰に苗代茱萸の赤く熟れをり
    長野県飯山市 小川 みつぎ
  • 髪あげて被爆の傷痕見せし友明日退院の夜はじめて語る
    埼玉県川越市 水村 浅子
  • 嬰児を背負い手をひき出征を見送る妻の像の哀しも
    長野県川上村 吉沢 豊子
  • 「誰かのために征くと思いたい」粉(こ)雪の夜乞われし写真還ることなし
    千葉県市川市 西嶋 法子
  • 「パッパはだめ」と二歳の孫の言ふに負け最後の一本を吸ひ終りたり
    長野県諏訪市 浜 浜雄
  • 茄子苗を植えいるわれを病弱な夫が見に来ぬ長ぐつはいて
    埼玉県川越市 正木 経子
  • 乳飲み児を背負える妻と五十年前植えし山の木売れぬ世となる
    長野県松本市 山口 正之
  • 寄り集い桜の下ゆく入学児の胸に揺れいる防犯ブザー
    長野県塩尻市 横山 よ志子
  • 百歳の母を護りて峡出でぬ友に合はせつ喜寿クラス会
    長野県宮田村 河井 房子
  • 紺青(こんじょう)の空澄み渡る此の朝(あした)我に男の子のひ孫生まるる
    静岡県大井川町 畑 春代
  • 送り盆子も孫も来ずゆるる萩唯ぼんやりと眺めてをりぬ
    長野県塩尻市 安田 ひさ江
  • 膝をつき手をつき土に平伏して草取る畑に陽炎ゆるる
    長野県諏訪市 宮阪 幸
  • それぞれにしあはせいろの灯の点る向かう三軒わが両隣
    兵庫県加東市 小紫 博子
  • 荒梅雨の雨に打たるる電線の巣立ちし燕ら軒へ戻らず
    富山県富山市 木村 八朗
  • 日に幾度履く地下足袋の掛けこはぜしつくりゆかぬ外国製は
    長野県塩尻市 青木 豊子
  • カマキリの幼のいくつ逃れゆくわれの拙く草刈る前を
    長野県宮田村 石曽根 香
  • 一人住む家の軒端の春日影「畑に居ます」と賢治のように
    埼玉県秩父市 岡部 すず子
  • 駆けくだる獅子の雪形あらわれて畑打つ老いに力湧きくる
    長野県大町市 中村 麻雄
  • 定年となりし夫の手伝いをはじめて受けて葡萄出荷す
    長野県下諏訪町 古田 ぬい
  • デモ隊のわれらを擲ちし警官も老い共に酌む半世紀経て
    東京都練馬区 佐藤 次郎
  • かつて眼を「銃後」といふ戦場に失ひし母よ新しきラジオを買はむ
    長野県長野市 宮下 いち子
  • 清(ちゅ)ら布(ぬぬ)を蘇らせし人の手元より舟のごと上布の上をすべる杼
    長野県長野市 金山 敏子
  • 商いに父が使いし大算盤はじきて居ればちちの匂いす
    福井県越前市 増田 千代子
  • 人捜がす施設の屋外放送にときに不安になりて慣れゆく
    長野県千曲市 日詰 百合子
  • 何処までも青葉深かり八十八歳の歩を失ひし姑(はは)の退院
    長野県木曽町 池井 十与子
  • 母を叱る姉をたしなめている吾は姉より母に遠い存在
    東京都東村山市 岡本 和子
  • ふみしめてふみしめながら幼児の一歩一歩が吾に近づく
    兵庫県小野町 藤井 早苗子
  • 千年の木は千年もたせんと塔建ちあげる宮大工いふ
    群馬県富岡市 高田 はつ
  • 平和行進に今年も参加せりしんがりに核兵器廃絶のプラカード掲げて
    長野県伊那市 高橋 忠
  • 枇杷の樹は大き鳥籠実の熟れてひねもす去らぬ鵯のにぎはし
    神奈川県川崎市 窪田 雅夫

題詠 最優秀賞(1首)

  • D51(デコイチ)の終の乗務の汽笛(ふえ)吹きし塩尻駅はぶどう香りき
    長野県大桑村 鈴木 昌親

題詠 優秀賞(3首)

  • 二十歳でも十九歳と変わらずに青くさい香りいも虫のように
    北海道札幌市 笹﨑 未歩
  • 窓下を遠ざかりゆく足音に耳すましおりぶどうが匂う
    東京都杉並区 赤司 喜美子
  • 頬摺りておのこおなごの双子抱く二十歳遥けしわれは九十歳(きゅうじゅう)
    長野県松本市 横山 昌子

題詠 佳作(24首)

  • じいちゃんはぶどう色だと決められて好きになりたる紫を着る
    徳島県美波町 下町 昭
  • ぶどう園笑う娘の走り来て熟した房の間に間に映る
    富山県富山市 北川 邦彦
  • 本生りと末生りとでは喉越しに微妙な差あり干葡萄にも
    埼玉県所沢市 若山 巌
  • 値の下り採り残されしぶどう園に和みつつ鵯(ひよどり)の群れゐる
    新潟県新潟市 吉岡 泰三
  • アルバムの二十歳のわれは笑みてをりその十日後の父の死も知らで
    東京都江東区 木下 豊子
  • 連錦と人潤しし葡萄なり彼(か)の銅鏡の葡萄唐草
    長野県松川町 米山 恵美子
  • 台風に押しつぶされし葡萄棚涙怺へて起しゆくなり
    長野県塩尻市 田中 正志
  • 十五年過ぐるも去らぬ座敷わらし二十歳のままをのこす俤
    東京都武蔵村山市 髙階 雅信
  • 文庫には文庫の香あり厚紙の扉ひらけば葡萄一房
    大阪府茨木市 松本 多美男
  • 農協の集金に来る藤原君同級生の孫なりはたち
    兵庫県小野市 松尾 鹿次
  • ひたぶるに心臓移植のドナー待つ二十歳の孫が折る千羽鶴
    大阪府岸和田市 向井 靖雄
  • 高齢化のぶどう作りも難儀なり猫の手クラブの助けを借りる
    長野県塩尻市 原 和子
  • 一升瓶の葡萄酒どんとおかれたる卓を囲みて亡き人ら踊る
    長野県塩尻市 雨宮 かず子
  • 一房のぶだうのごとく七人のわれらはらから寄りそひ育つ
    佐賀県佐賀市 宮地 梢
  • 叔父たちの征きたる家のがらんどう棚の葡萄は風に揺れいき
    長野県飯田市 熊谷 よね子
  • 庭に立ち落下傘部隊の訓練を飽きず見ていし二十の青春
    宮崎県木城町 壱岐 志津子
  • 声わかく二人の気持ちは二十歳など軽くうたえり夜のテレビに
    福岡県大野城市 飯田 俟子
  • つぶらな実つるり丸めて僧となり友の変身ぶどう送りし
    愛知県豊田市 原田 みさを
  • もう少しまるくなるまで寝かしおく白き葡萄酒きみの憤懣
    石川県金沢市 北西 佐和子
  • 素足にてぶどう潰しし乙女の日ワイン醸造芳醇なりし
    埼玉県新座市 舟山 桂子
  • 吐魯蕃の駱駝曳く子は仰向きて水飲むごとく葡萄を食めり
    長野県安曇野市 矢花 彪二
  • ばあちゃんはぶどうを食べるの早いねとふた粒入れた口覗かるる
    長野県諏訪市 金子 圭子
  • つぶさずにつぶされずにとつぶら実の寄り添うちからぶどうひと房
    愛知県新城市 伊田 あや子
  • 村に慣れて農の顔して友来たり農新聞に葡萄包みて
    岐阜県中津川市 赤尾 袈夫
  • ※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
    ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。