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第21回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

平成19年9月29日に開催しました
第21回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入選作品を発表します!!

最優秀作品(1首)

  • 強がりを言ってはいるがまだ七歳ぎゅっと抱けば太陽の匂ひ
    長野県塩尻市 折橋 玲子

優秀作品(5首)

  • 地震に遭いしお米のふるさとかなしみの詰まる五キロを背負う夕暮れ
    東京都練馬区 松本 正子

  • ホトトギス全身麻酔醒めて来しベッドの上に生きて我が聴く
    富山県富山市 大伴 拓

  • 辞表書き内部告白すると言うキー打つその手震えておりぬ
    岐阜県岐阜市 加藤シズカ

  • 山見えぬのっぺらぼうな空の日は物忘れ多し信濃に旧りて
    長野県松本市 諸隈 桃代

  • 黄砂去りし朝の空のみづあさぎ常念穂高きはやかに立つ
    長野県塩尻市 高砂 定子

入選作品(25首)

  • 同業の閉店又も聞く朝を身じまひきりりと店を開けゆく
    長野県安曇野市 三原多まき

  • 定年後洗濯係買って出る手に取る妻の下着の小ささ
    長野県小諸市 星野 直人

  • 戯れてわれに抱きつき女の孫はじいは小さくなりしと言ひぬ
    千葉県印西市 吉川 晴雄

  • 火の中より生れたるものとも思はれず白磁の古陶さむき影引く
    長野県宮田村 新谷 悦郎

  • おさなさの残れる黒き牛の背に赤きとんぼがとまりにおりる
    山梨県中央市 小高 弘美

  • 人の名もものの名前もおほかたはうするる夫の微笑うつくし
    広島県府中市 田頭 亮子

  • 夏祭りゆかたを着たる少女等はうちはを口に当て笑ひぬ
    神奈川県横浜市 黒沢 雅子

  • 注射待つ一年生は無言なり耐へる顔あり祈る顔あり
    長野県木祖村 新村 亮三

  • にぎはしき雛芥子壷に挿しゆくに意のままにならぬ二、三本あり
    岐阜県美濃加茂市 木村恵美子

  • 地響きをたてて下ろさるるラワン材寒気に海の匂ひを放つ
    岐阜県下呂市 纐纈 昭三

  • 餓死したる象のはなしに涙する戦争知らぬ小学生の孫
    長野県長野市 藤沢三千子

  • 繰り返しひとつ憶えてまたひとつこの子の語彙は今十こまで
    長野県塩尻市 土田 安子

  • ほつほつと螢があかり点すごとあたらしきいのちモニターに映る
    愛知県名古屋市 山田 公子

  • 孫ですと子より届きし写真メール胎児がひらりと指かかげをり
    三重県東員町 尾崎 淳子

  • ボランティアに行くと男子らの声聞こゆ駅の広場の花壇明るし
    三重県名張市 藤野 萬耶

  • 父と来て植えたる杉山下陰のほの暗むまで幹太く立つ
    石川県中能登町 中村 栄蔵

  • 我百歳弥山頂上岩に立ちはるかに眺む瀬戸の内海
    福岡県福岡市 昇地 三郎

  • 鳴き出しし時鳥の声浄くして一山しんと威儀正しけり
    三重県伊賀市 出後 幸子

  • 山姥の子育て話聞きてよりどんどり山に心寄せいる
    長野県長野市 宮島さだ子

  • 空港より降りきし幼は「山がいっぱい、いっぱいだね」と声はずませる
    兵庫県香美町 嶋田冨美代

  • 捕虫網を手に山道を駆けてゆく子らのポケットにひぐらしの鳴く
    台湾台北県台湾 林 百合

  • 山肌の陽炎にゆらめく火焔山悟空は何処荒涼の地に立つ
    千葉県館山市 川崎 富子

  • 山裾の棚田に草を取る人の目深に被る菅笠うごく
    埼玉県秩父市 坂本 公平

  • 山野駆け縄文人ら狩りせしや田畑おこせば矢尻出でくる
    長野県塩尻市 洞派 里子

  • 青青と繁る奄美の島山に吸はるるごとく機は下りはじむ
    岐阜県各務原市 前田 靖子

佳作(15首)

  • 膝を病むわれの暮しを支え来し主治医のごとき自転車磨く
    三重県松阪市 田中 梅乃

  • 露の世に縁を結ぶ匙一つ介助の夕餉とろとろと過ぐ
    長野県御代田町 内堀 隆久

  • クリオネの群れがひとつのクリオネとして画面(キャンバス)の黒白(こくびゃく)の中
    栃木県佐野市 上島 妙子

  • 梔子のかおり一輪膳に乘す老いて光の無き妻の為
    神奈川県藤沢市 萩原 文男

  • シャッターを閉じた街中つばめらは低く飛びゆく梅雨がはじまる
    長野県下諏訪町 高木 和子

  • いい女にならうじやないのミュージカルを見終へたるのち娘と吾と言ふ
    長野県飯田市 木内かず子

  • 風を切る大綱のリズム身に捉え盲の子らの縄跳び弾む
    風を切る大綱のリズム身に捉え盲の子らの縄跳び弾む

  • 干し草の匂ひ残れる少年ようすもやの中真っすぐに行け
    北海道稚内市 及川 文子

  • 「心労があるの?」と医師に問われても思い当たらず不安増す診療室
    岐阜県中津川市 小栗 八穂

  • 槍の尾根降り分け過ぎる夕立に全校登山の列乱れゆく
    長野県松川村 山崎 圭子

  • 赤彦の下宿の跡も山波も信濃の国は目に在りて病む
    群馬県桐生市 坂口 清子

  • 田代橋よりの写メール鮮やかに穂高の嶺に雲ちぎれ飛ぶ
    東京都あきる野市 宮田 竜子

  • にぎやかに交通規制その先に祭りの山車がゆうらりと行く
    埼玉県秩父市 浅賀 啓子

  • 鉢伏山を程よき位置に座らせて吾が村のありわが家のあり
    長野県塩尻市 嶋崎 千歳

  • 天城峰の湧水のんどに涼やかなことば生れしむ秋はじまりぬ
    静岡県伊豆市 舟本 惠美

奨励賞(49首)

  • 時が又私の背中を静かに押した五十三歳秋の夕ぐれ
    長野県中野市 市川 寛

  • 水口に酒振りかけて樋を引けば雪消の水は田に躍り入る
    埼玉県さいたま市 泉 明

  • 新しき靴並びをりそれぞれに進路決まりし孫の旅立ち
    静岡県藤枝市 井村 なを

  • 水涸れてあらはとなりしダム底の切り株めぐり若草芽吹く
    福岡県那珂川町 江頭 静枝

  • 安曇野に麦秋の波の広がりて微睡み色の麦の香やさし
    長野県飯田市 北村 咲

  • 透きとほる雨ぼんやりと見てをりぬ検査結果を待つ間に妻と
    長野県辰野町 遠藤 良彦

  • 鳴き声に何はさておきいそいそと猫なで声で猫に返事す
    長野県岡谷市 小口 英子

  • 死ぬるまで職は習ひぞと口ぐせに大工の父の言ひし想ほゆ
    和歌山県紀の川市 青柳 寿一

  • おばあちゃん、おばあちゃんどこと節つけて朝の階段おりてくる孫
    長野県塩尻市 雨宮かず子

  • ゆるやかに心ほぐれてゆきにけり深夜の電車に席譲られて
    神奈川県横浜市 滝 妙子

  • 雨が上り土の湿りを待ちて蒔く芽の出の遅い人参の種
    長野県塩尻市 矢彦沢和子

  • 大陸に二度も征きたる戰歴の炎が未だ老い身を焦す
    長野県塩尻市 百瀬 壽平

  • 水流に似る加湿器の音聞きて眠れば魚の世界へ入りぬ
    千葉県船橋市 七五三 八重

  • 散歩する今日の目あては児どもらが笹舟ながす橋までの距離
    群馬県伊勢崎市 小暮 園枝

  • 米寿なる母の作りし馬鈴薯を四世代九人そろひて食ぶる
    栃木県那須塩原市 高松 三枝子

  • 老い猫をそと抱きやれば我が膝に命預くる如く眠りぬ
    長野県南木曽町 植村 功

  • 何処より来し人ならむプレハブの出稼ぎの宿舎に灯のともりたり
    兵庫県養父市 米田 喜美子

  • ビル街に立てば無呼吸症候群となりて智恵子のごとく空恋ふ
    宮城県仙台市 山田 八重

  • 名前だけ覚えしナースの微笑みに生きる勇気をもらう七月
    長野県千曲市 高橋 民夫

  • トラクターの納屋より聞ゆエンジン音離農の夫がまた回している
    岐阜県下呂市 今井 みち

  • 久々の電話の声が明るいと友に言われて息の婚を告ぐ
    長野県須坂市 森 ゆり子

  • 初任地の学校めぐりてゆるやかに義兄の霊柩車は早苗田を行く
    長野県長野市 藤田 美也子

  • 足踏みの稲扱機械小屋に錆び辛き青春の記憶はさだか
    山口県宇部市 藤井 重行

  • 月曜日のチャイムきこゆる雨上がり校門横の裸婦像眩し
    長野県塩尻市 小野みや子

  • 目覚むれば個室しずけしひえびえと光りて落つる夜半の点滴
    山梨県北杜市 清水ゑみ子

  • たんぽぽの綿毛吹きあふ道くさの子はみな鳥の貌してをかし
    長野県松本市 古町 栄子

  • 眠りいる子どもの頭ほかほかのジャガイモみたいな匂いする夏
    長野県岡谷市 増沢 仁美

  • はつなつの風通しおり原爆の光を浴びし兄の軍服
    岐阜県中津川市 吉村 冨紀子

  • ブルックナーの楽につつまれ一時間雨の音には気付かなかった
    山口県岩国市 吉村 説子

  • 満月の光の注ぐテント村影絵のごとくアンナプルナ聳つ
    東京都世田谷区 小林 博之

  • 奇妙山尼厳りとふ山の名にも馴染みて早も半世紀過ぐ
    長野県長野市 久保 規子

  • 山々を越えて連なる鉄塔は雲押しあげて稜線に立つ
    長野県塩尻市 市川喜美子

  • 走り根を跨ぎつつゆく林道は足裏にやさし腐葉土をゆく
    大阪府忠岡町 中村ハルミ

  • 野鳥二羽飛び去りし後も初夏の光に山は揺れつづくかも
    徳島県徳島市 野口 真雪

  • 山開きなべて熟年一列に行儀よくして稜線をゆく
    静岡県熱海市 原 一男

  • 古里の山の林の勢ひゐて父植ゑし杉母植ゑし杉
    島根県松江市 津田 恵里

  • 山峡の畑に夫と大根曳く三時を過ぎればもう日が落ちる
    長野県飯田市 秋山優美子

  • 白じろとにせアカシアの花見えて夕暮れ長き初夏の里山
    北海道積丹町 竹谷 弘子

  • じゃがいもを掘る山畑にのっと出た月の大きさよ剣淵西原野
    北海道札幌市 高柳 とき

  • 新緑の山を映して静かなり田植え待たるる峡の棚田は
    長野県上田市 徳武 信彦

  • 生かされてまた巡り合ふ初夏の泰山木の大き花花
    千葉県館山市 吉田 和枝

  • あの山だけ見るのよ足は動かすの巣立ちに似たり自転車特訓
    長野県塩尻市 折橋 玲子

  • 遙かなる北ア連峯山波にそば蒔き入道雪形見えて
    長野県信州新町 新井 睦子

  • この右手うるし塗る業持ちしまゝ継ぐ人もなくて山里に生く
    長野県塩尻市 百瀬 武雄

  • 作るなと言はるる田にも水満ちて青葉の山を朝々うつす
    長野県諏訪市 宮阪 幸

  • 靄たたば熊野の明日は晴れと言う山に言問い人ら生き来し
    和歌山県海南市 赤松 伴子

  • 亡き父母が開墾したる山の畑蕨の萌えて妻の呼ぶ声
    京都府綾部市 松下二三夫

  • 露に濡れ山の下草刈りをれば母縫ひし紺地のの手甲にほふ
    長野県飯田市 竹内 和子

  • 塩尻駅を過ぎて展ごる山並に涙止まざりき復員兵われら
    長野県松本市 赤羽敬一郎

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。