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第24回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

平成22年10月3日に開催しました
第24回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入選作品を発表します!!

最優秀作品(1首)

  • 君の眼は二人の少女の目に生きて何処かで今年のさくら見てるよ
    香川県坂出市 山地みさを

優秀作品(5首)

  • 立ちあがれ立ちあがれよとのぼり藤朝日に我は立ちあがりたり
    長野県塩尻市 小野和喜子
  • ロザリオの鎖のごとき沖縄の悲しみ今も夏潮寄する
    長野県松本市 衣川 朝子
  • 朝はやく妻の知らない口づけをさらり交はせり貴なるフルートに
    愛知県春日井市 川島 信
  • アンデスの山のはざまに拡がれる塩のひろ野を衛星うつす
    島根県津和野町 小松 龍一
  • 太古なるマグマの記憶ヒマラヤの塩の一塊ほのかに赤し
    高知県高知市 山下千賀子

佳作「自由題」(9首)

  • 幼子は「宇宙へ帰る」と言ひながらテレビの世界へ戻りゆきたり
    長野県塩尻市 塩原省一郎
  • ふたり来て諏訪湖を渡る風を受く遊覧船は弧を描くかな
    神奈川県秦野市 細井 誠治
  • ヴィーナスと呼ばるる土偶ちちふさの豊かなる身はみごもりてをり
    東京都世田谷区 庄野 史子
  • 日にいちど輸送機ひくく飛ぶ谷に普天間のこと思ひて住める
    長野県大桑村 鈴木 昌親
  • スカイツリー日に異に高く伸びてゆくああもうわたしの及ばぬ異界
    東京都江東区 小藤 和子
  • 六十年を祀りし鞴(ふいごう)の炉の神を下ろして夫は工場閉ざす
    宮城県亘理町 谷津 貞子
  • 年ごとに自殺率増す市に帰り砂丘湖に卵生む赤秋津
    新潟県新潟市 小野 昌子
  • ふりふりの付いたブラウスは二十代のお気に入りなり片付かぬ部屋
    長野県伊那市 唐沢みつほ
  • 瘡蓋を剥してゐるやう着信に連なる君の番号を消す
    三重県東員町 太田美千子

佳作「題詠」塩(6首)

  • 島岬いそみの小屋の大釜に藻塩は灰汁を噴きつつ滾る
    新潟県佐渡市 石塚多惠子
  • 残雪の山ひだ深き白馬岳若葉きらめく塩の道行く
    長野県塩尻市 矢彦沢貞美
  • われの干す梅に点火をするごとく塩辛とんぼが颯と触れゆく
    長野県飯田市 木下瑜美子
  • 塩見岳雲たなびきて伊那谷の五月の空に白く輝く
    長野県伊那市 田畑有美子
  • 汗だくに塩の香のする柔道着を丸めてかつぎ孫娘くる
    大阪府泉大津市 小松 道子
  • 「塩加減は霜降るやうに」亡き母の使ひし桶に野沢菜漬ける
    長野県長野市 相澤美恵子

入選作品「自由題」(15首)

  • 水底に空と雲とを沈ませて孤独の魚をなぐさむる湖
    石川県金沢市 越川由希子
  • 麻痺の足の代わりとなりて十三年無事十万キロの車検おえたり
    静岡県裾野市 石井すみ子
  • このまんま死ななかったらどうしようこの頃元気な姑の口癖
    福岡県筑後市 井口登志子
  • 父さんを食べてしまいたいほど好きと惚けて母はのどかに奔放
    静岡県浜松市 信藤 洋子
  • もう一人違う自分がそこに居て妻を弔う終始を仕切る
    長野県小川村 稲葉 利郎
  • 「オーイお茶」と呼んで見たくて自販機を押せばポロリお前は素直
    兵庫県加東市 埜尻のぶ江
  • ペースメーカー埋めたる胸に深く吸ふリラの匂ひのはつなつの風
    山梨県富士吉田市 渡邊美枝子
  • 闊歩せるニーソックスのをみなごの太腿しろく夏をむかへる
    埼玉県坂戸市 高橋 元子
  • 海底の隆起杳けき変動を証す化石の貝に手を触る
    栃木県塩谷町 増渕 梨雨
  • 頬づえは夢見るポーズ図書館の少女の髪に夕日やわらか
    岐阜県各務原市 丹羽 純子
  • 「湧き上がる」「ぐんぐん伸びる」「せり昇る」夏の雲には動詞がにあう
    長野県松本市 宮澤三十四
  • 虫を追ひ葉っぱ拾ひてゐし児童等が午後の校舎に吸ひ込まれゆく
    長野県塩尻市 水谷 弘子
  • 春浅き分水嶺に立ちをれば流れゆく雲我六十歳
    長野県塩尻市 青木 節子
  • 十キロの柔らかきものモコモコとわれを乗り越える日曜の朝
    長野県岡谷市 増沢 仁美
  • 歯を抜いた後の小さな血だまりに小さな私がいっぱいいるわ
    長野県岡谷市 今井 紀子

入選作品「題詠」塩(10首)

  • 息子らの住む家を建つると地祭りの清めの塩に光さしゐる
    長野県塩尻市 宮坂 栄
  • 置場所はここに限るといふものあり四十年変はらぬ棚の塩壺
    長野県伊那市 中村 祥子
  • 人力車つぎの客待つ青年はひしやくの水と塩をなめたり
    愛知県春日井市 川島千枝子
  • 此処までは波打ち寄せる浜でした資料館建つ塩田跡地
    山口県防府市 尾辻のぶほ
  • デスバレーの塩の大地はまぶしけれひかりのなかにしばらく遊ぶ
    千葉県印西市 三ツ木絹江
  • 地の塩となるべく此処に果てしいのち原城の跡は夏草の丘
    佐賀県佐賀市 一丸 和幸
  • さやうなら笑顔の君を想ひつつきよめの塩の封を切りたり
    長野県塩尻市 田中 瑛子
  • 恐竜の時代の海水湧き出づる鹿塩の湯に身を沈めたり
    東京都品川区 中原 兼彦
  • 哀しみや嬉し涙の塩つぱさにいろいろありて今日の日があり
    長野県塩尻市 坪田 綾子
  • うす塩に味をととのへ新じやがと春のキャベツのポトフあぢはふ
    長野県塩尻市 中神 元子

奨励賞「自由題」(25首)

  • 音のなき指しなやかに手話の手の朝日に映えてバス待つ親子
    沖縄県那覇市 新垣 和子
  • もろびとの嘆きを聴くとみほとけの耳巨いなり蓮の台座に
    福岡県北九州市 中村 重義
  • 食べられる今の時間を妻に言ふ年金生活いつも前向き
    長野県長野市 徳竹三三男
  • 午前四時眠れぬことも良しとする神は思考の時を賜ふと
    鹿児島県鹿屋市 内倉 就昭
  • ゆきずりの一人となりて運ばるる歳晩の駅のエスカレーターに
    神奈川県川崎市 斎藤 文子
  • 刈り終へし草の褥に仰ぐ空ひろびろふかし今日も生きゐる
    長野県塩尻市 中野かえで
  • 雨止みてじよじよに澄みゆく水田に月影さしぬ明日は田植ぞ
    神奈川県小田原市 後藤 忠國
  • るると鳴きりりと応えき初夏の空を斬りつつ飛ぶつばくらめ
    長野県千曲市 本道 悦子
  • 前景に通学かばんそっと置く学舎描く三年生徒
    長野県松本市 清沢 龍美
  • おばあちゃんは百まで生きると言ひたればその気になりて元気満ち来る
    長野県塩尻市 福井 妙子
  • 献眼も献腎カードもすでに古り衰へし眼やさしく洗ふ
    長野県安曇野市 三原多まき
  • 亡き父の寝ていし湯所に寝て見れば小窓より辛夷の白き花見ゆ
    秋田県秋田市 尾形 千秋
  • 宿舎より児を伴ひて帰りゆく夜勤明けなるナースが二人
    兵庫県加東市 小紫 博子
  • トマト売る日本語うまき越南の人にトマトの見分け方訊く
    愛知県名古屋市 南 真理子
  • 上名木はキクノばあさん独り住む青葉かなしき限界集落
    新潟県上越市 細井 博一
  • 会話なき特養ホームの昼食に兄は背まるく豆すくいおり
    岐阜県岐阜市 松尾 静子
  • 吾を待つ畑のありて紺にほふ地下足袋買ひ換ふ七十路なかば
    長野県諏訪市 田中 孝子
  • 昔よりやさしき手となる機械化の進みし夫は畳職人
    長野県塩尻市 矢崎 修子
  • 早苗田となって夜半に蛙寄る都会の中のたった一枚
    長野県駒ケ根市 山岸 弘明
  • けふのこと想ひ出となる日のあらむ吾娘と着物の土用干しする
    海外アメリカ合衆国 帆足 敏子
  • 根っからの百姓たりし吾が祖父よ六十二歳を「夜畑」で行きぬ
    長野県飯田市 林 静磨
  • 卒業せし田舎の校舎は毀たれてオルゴールの木箱となりて届きぬ
    長野県松本市 平林加代子
  • 麦秋の穂先が揺れる風を受け鮎友釣りにうつつを抜かす
    長野県松本市 酒井 良忠
  • 好きな子の名前を当てられふにゃふにゃの海月になっちゃう腕白坊主
    北海道稚内市 及川 文子
  • 象さんの唄に合はせて保母達の後ろ歩きの縄電車行く
    東京都国立市 大久保カツ

奨励賞「題詠」塩(20首)

  • 春の夜の海の凪より塩を汲む千五百年前の古事に慣ひて
    宮城県石巻市 大和 昭彦
  • 亡き父が得難き米と替ふるため塩焼きくれしうしほのひかり
    青森県中泊町 宮越恵美子
  • 焼き塩を産後の母に焼きたるは姉ちゃんとなる九歳の吾
    秋田県大仙市 竹村 厚子
  • 十キロの梅に塩を打ち振りて坐りよろしき石二つ載す
    大分県日出町 藤野 和子
  • 赤々と燃える囲炉裏に塩ふりし鮎は次第に尾びれ上げゆく
    岩手県一関市 村上 和子
  • 塩尻より湖を巡れり赤彦の『氷魚』ふところに諏訪大社まで
    東京都世田谷区 小林 博之
  • 歩荷らが喘ぎ登りし塩の道真清水坂にわれも憩へり
    東京都練馬区 廣瀬 鐵雄
  • 沼矛より垂る塩の累なりておのころ島はあらはれにけり
    福井県坂井市 武曽 豊美
  • 汗あへて草に憩へば陽に乾く腕うすらかに塩ふきてきぬ
    長野県南木曽町 植村 功
  • 塩の入の峠越えむと良寛の汲みけむ水辺黒揚羽舞ふ
    新潟県小千谷市 金子欣一郎
  • 闇の塩買いて月なき五里の道のがるるごとく父と急ぎし
    愛知県春日井市 菅原すみ子
  • 清め塩豪快に撒きて氏子衆が地鳴りの如湧く御柱の儀式
    長野県伊那市 橋爪すみ子
  • 海ほほづき唇にうすうす塩の味とほき日を恋ふあねといもうと
    愛知県名古屋市 藤田 光代
  • 美ケ原牧場の夜半キラキラと鹿の目光る牛の塩場に
    長野県塩尻市 藤森 幸子
  • 背に塩をふけばくぢらと呼ばれゐし職工をおもふ工場跡に
    埼玉県坂戸市 高橋 元子
  • 産卵を終へて浮草にいこひゐる塩辛とんぼ遠くはゆかず
    茨城県坂東市 本間 猛
  • クムランの四千年の岩壁は時を煮つめた塩のかたまり
    東京都練馬区 舟木 栄子
  • 研ぎたての包丁軽しリズミカルに春のキャベツを塩揉みにする
    長野県辰野町 米窪貴施子

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。