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第25回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

平成23年10月2日に開催しました
第25回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入選作品を発表します!!

最優秀作品(1首)

  • セシウムの雨降る街に並びつつ水求めむと幾時間待つ
    福島県福島市  今野 金哉

優秀作品(5首)

  • ランドセル背負いし遺体抱きかかえ泥にひざまずく自衛隊員
    長野県塩尻市  中澤 榮治
  • 期限付きの幸せ毎日噛みしめて育児休職もうすぐ終わる
    長野県岡谷市  増沢 仁美
  • 玄蕃之丞に選ばれし吾子舞台袖沈思黙考出番を待つ
    長野県塩尻市  小松  学
  • 棚上のわが顔描ける水彩画生徒を叱るわれと目のあふ
    東京都杉並区  岡崎 祥枝
  • 吾が家に伝わる古き引出しに水車屋(くるまや)曽祖父の鑑札があり
    長野県諏訪市  浜  浜雄

入選作品「自由題」(8首)

  • 世界婿養子連盟日本支部初代支部長斎藤茂吉
    東京都杉並区  庭野 治男
  • 救援隊待つ屋上の父と子に余震津波の夕闇迫る
    長野県塩尻市  百瀬 正雄
  • 保育士の押し行く大き乳母車つくしの如く園児ら立てり
    新潟県長岡市  坂田 則子
  • 熱出づれば生くる証とみづからに鞭打ちましき百歳の叔父
    長野県松本市  鮎澤 永二
  • そこかしこ青白き光点しいて夜半の厨は蛍の宿(すみか)
    長野県塩尻市  小野美佐子
  • 紺青の空を武骨に断ち切って焼岳ざらり山裾ひろぐ
    奈良県奈良市  かせ谷  勝
  • ままごとの口調は母さんそっくりで時に父さん叱ったりする
    東京都三鷹市  佐野  靜
  • 体ごと斜めにママをずつと見て得意げに唱ふ園児発表会
    大阪府堺市  梶田有紀子

佳作「題詠」水(6首)

  • 水玉のひかりの中に君がいて僕の心を揺さぶっている
    長野県箕輪町  藤本 光男
  • 水張りし田の面に浮かぶ満月の大き余震にゆらめきてをり
    千葉県茂原市  旭  千代
  • 水温む川に鍋釜浸けおけば小魚群れて食事楽しむ
    長野県木祖村  新村 亮三
  • 鯵は鯵鰤には鰤の路あらむ距離保ちつつ水槽めぐる
    神奈川県相模原市  中田 典代
  • 海面に水撒きしぶきの花咲かせわが船灘に鰹つりあぐ
    大阪府岸和田市  向井 靖雄
  • シュウパロ湖炭坑(やま)の悲哀を飲み込んで夕張岳の水あつめ満つ
    北海道白老町  山本 信雄

入選作品「自由題」(13首)

  • 羽傷め靜かにあゆむ孤独なる丹頂をつつむ冬の夕焼け
    北海道札幌市  渡邊 秀雄
  • 朝方に傍に寝ている妻の息手をかざしてはそつと確かむ
    青森県五所川原市  山中  治
  • わが住むは峡極まりしひとところ須佐之男命(すさのお)なれば人恋ふところ
    群馬県みなかみ町  眞庭 義夫
  • はじめてのパーマをかけし母を見つ髪のさわやかひそかにうれし
    山梨県南部町  伊藤 菊美
  • 残雪の山ひだ深き常念岳(じょうねん)を正面に据え若葉きらめく
    長野県上田市  井戸田桂子
  • ソプラノの澄みたるソロを聞くごとし風に一樹のきらめきて散る
    山梨県北杜市  山口 明美
  • 「またあした」おさなふたりが分かれゆきだあれもいない夕燒けの路地
    茨城県結城市  伊藤 閣恵
  • 森林が漁業育てること学び檜木一〇〇〇本植える海の子
    長野県木祖村  新村 亮三
  • 弥生朔日何事もなく齢ひとつ増え二つ忘れて九十一歳
    長野県塩尻市  畑中 千代
  • 〈日本海溝〉を探り探りて小半日百科辞典の海底に居り
    長野県塩尻市  濱 すみ子
  • 少し重い風船が首に乗つてゐるそんな朝です疲れ残りて
    長野県上田市  田中 敦子
  • 三年日記真つ新のページひらきたり未知の時間は罫線である
    静岡県清水町  前田 鐡江
  • 若き日の職場の跡地小さくて海からの風過ぎ行くばかり
    島根県松江市  安部 歌子

入選作品「題詠」水(12首)

  • 身の丈がかくれるほどの炭負うて渓の清水を掬いいただく
    新潟県加茂市  番場  馨
  • 早苗田は五月の大空とり込みて水底深く鳥影の飛ぶ
    長野県塩尻市  嶋崎 千歳
  • 水滴を水の卵とよびし子は中年となりコンピューター打つ
    長野県小諸市  土屋たけし
  • 七年に一度の祭り終りたり今日は田ごとの水口開ける
    長野県塩尻市  小野みや子
  • 水桶を充たすに馬は音立てて一気に飲み干すけふも真夏日
    長野県佐久市  山本 徳子
  • 天水をたのみの棚田念入りに畦塗り終えて田鍬を洗う
    鹿児島県いちき串木野市  橘木 重雪
  • 澄む水に早苗はしかと根付きゐてそれぞれの穂に力満ち満つ
    山口県山陽小野田市  田中カズ子
  • 父果てしボルネオ島は遥かなりテレビがうつす洞窟の水
    東京都立川市  小町 信子
  • 峡に帰り農継ぎ蛍の川の水取り入れ棚田六枚鋤けり
    高知県いの町  間 浩一郎
  • 水飲みてシベリヤへ翔つ丹頂ら上昇気流にクナシリを越ゆ
    北海道札幌市  渡邊 秀雄
  • ひねもすを白じろき雨の降るを見るソーダー水の壜にいるわたし
    石川県金沢市  越川由希子
  • 春たけて池の水温あがるらし亀の夫婦が甲羅干しおり
    徳島県徳島市  本田  守

奨励賞「自由題」(24首)

  • 南相馬の一時帰宅の牛飼は痩せし乳房の牛を撫でをり
    長野県塩尻市  下井 貞子
  • 嬰児に乳を含ます孫娘輝き止まぬ母の顔なり
    長野県松本市  竹下 愛子
  • ジャンケンでパーとグーしか出さぬ児がねじれたチョキで勝った瞬間
    東京都立川市  小町 信子
  • 冷凍まぐろ満載したるトラックがカーブで一匹落してゆけり
    静岡県焼津市  定石  栄
  • 大津波にのまるる集落映しゆくテレビの前に背筋震へる
    長野県塩尻市  田中 靖子
  • 竹藪の陰にひっそり道祖神目元やさしくわれを見つむる
    埼玉県鶴ケ島市  南雲ミサオ
  • 来るはずもなき人を待つ病窓の白雲に微かな怒りを覚ゆ
    長野県塩尻市  清水 守人
  • バイカウツギ鉢より地に降ろしたり終の棲処となるらんここに
    香川県宇多津町  岡本 典子
  • スコールが夜の森ゆくみどり児はさなぎのやうにはかなく温し
    大分県大分市  比見眞理子
  • 修理終え若き職人の試し吹くフルート工房の空気震わす
    千葉県八千代市  吉田 早苗
  • 商えぬ乳を搾りて牛守る牧夫をなめる痩せ牛の眼
    神奈川県鎌倉市  池田 達郎
  • 車椅子に小さくなりし母のせて白き髪切る薄日差し来ぬ
    長野県上田市  上沢 靖子
  • 病む母をいたわるごとくに抱えたり雨に倒れし穂孕みの稲を
    長野県佐久穂町  市川エツ子
  • 溶接機かすかに鳴りて放ちたる光の中に作業始まる
    長野県岡谷市  加藤美枝子
  • 空に向くアスパラの葉のやわらかくわたしの知らないアスパラになる
    富山県富山市  米原樹美枝
  • 食卓のいつもの場所に君が居るそれだけでいい一日の終わり
    熊本県熊本市  佐藤 寿子
  • 昨日まで馬鈴薯植えていた様な気のする友の今日は初七日
    埼玉県川越市  神田 悦子
  • 月愛(るな)・騎士(ないと)・七音(どれみ)・一二三(わるつ)・希海(のあ)・宇宙(こすも)かかる名前を貰ひて子供ら
    長野県塩尻市  丸山せつ子
  • うぐひすの啼くたび「はーい」と返事する妻は原初の人かもしれぬ
    福井県大野市  岩崎 武志
  • ともどもに買いしジャンバーふわふわの手を通さぬままに夫は逝きたり
    山口県岩国市  青木志津子
  • 案内(あない)する君の唄へる木遣唄木曾の桧山にひびきわたりぬ
    長野県飯田市  下平 岳人
  • 車椅子押してちひろの美術館母の目線で一日過ごしぬ
    福井県小浜市  東  紀子
  • 移り来しこの地に我ら住み慣れて庭に合歓の木も枝広げたり
    富山県富山市  木村 八朗
  • 馬鈴薯を畑にあさりし猪の子の足あとも小さく残る
    茨城県大子町  高梨 とし

奨励賞「題詠」水(23首)

  • 植ゑ揃ふ田毎に夕日映しつつ水はしづかに大地潤す
    長野県岡谷市  中島 則子
  • フクシマの野に放たれし牛・豚が泥水すすり群れてさ迷ふ
    新潟県小千谷市  金子欣一郎
  • 上諏訪の道路(みち)の蛇口に脚長蜂(あしなが)ともらい水する猛暑の真昼
    長野県富士見町  牛山千とせ
  • 衛星の写せし津波わたつみに巨き水輪となりて広ごる
    東京都江東区  松田 衣惠
  • 不動尊祀る清水の湧きあがり咲き初むる梅花藻薙ぎて流るる
    福井県鯖江市  佐々木邦子
  • 泥水にまみれし写真一枚を手にする母に涅槃雪降る
    大阪府高槻市  柿沼  功
  • 青々と大台ケ原の水集め宮川ダムの耀ひまぶし
    三重県松阪市  近藤美さを
  • 咲きほこる九十九谷の九輪草流れる水に映えて美し
    長野県辰野町  下田 明美
  • 体温の残れる義歯を手にとりて労う如く水に休ます
    愛知県豊根村  青山 その
  • 海の日の今朝は快晴はやばやと昼のニュースに水の事故伝ふ
    京都府城陽市  近藤 好広
  • 沢水の流れる音にリズムあり戸締まりしつゝ夜毎ききいる
    長野県小川村  西條 定子
  • クレソンの茂る小川に少年等ザリガニ捕らむと水濁しゆく
    千葉県船橋市  角本 泰子
  • ひと夏の終りを刃物研ぐ慣い荒砥に秋の水弾かせて
    長野県岡谷市  尾沢 昭
  • 穂高嶺の湧き出の水かわさび田をうるほし楚々と白花咲かす
    長野県塩尻市  柳澤 洋子
  • フクシマとなりたる地より弟の作りし水菜あおあお届く
    岐阜県岐南町  藤田 正代
  • 羽ひろげ今し翔び立つ水鳥の脚より滴る光の雫
    神奈川県三浦市  椙山 良作
  • 湧き水の清く拡がるわさび田に人影うごき安曇野は夏
    佐賀県佐賀市  一丸 和幸
  • 大雪山の雪渓の水川となり石狩平野の稲田つらぬく
    北海道札幌市  渡邊みよ子
  • 祖父の代水争ひをせしといふ隣も此処も過疎の村なり
    埼玉県鴻巣市  渡邉 照夫
  • うす紅の絵の具を水に溶かしては梅の花びらひとつひとつ描く
    長野県上田市  井戸田桂子
  • 盛り上がり盛り上がりつつ水湧きて姫川源流に梅花藻ゆらぐ
    長野県塩尻市  中山千津子
  • きらきらと春の日ざしを身に浴びて川の水飲むかもしか二頭
    長野県塩尻市  松原さよ子
  • 街の名も湧水町と変わりたり亡夫の知らない風光増えて
    鹿児島県湧水町  福田三四五

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。