第26回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品
平成24年9月29日に開催しました
第26回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入賞作品を発表します!!
最優秀作品(1首)
- 止まる馬逸れる馬あり草競馬馬にも意地のあるぞ嬉しき
長野県松川町 鋤柄 郁夫
優秀作品(5首)
- 夾竹桃のはざまに青き日本海八月十五日を若者知らず
福井県小浜市 杉崎 康代 - セシウムを計る日々なり桃の園青く小さき実に露光る
東京都八王子市 勢能 眞智子 - 厳寒の市場に帆立むきながら午前三時の一番客待つ
青森県八戸市 遠瀬 信子 - 原発の地に置き去りの母馬の悲しみを知らぬ仔馬がまつはる
福島県いわき市 伊藤 雅水 - 春耕の農機とどろく野辺をゆく馬医者と呼ばれし老爺の棺
長野県安曇野市 矢花 彪二
入選作品「自由題」(7首)
- 父よりも長きを生き来て父を恋ふ白く蕎麦咲くなだりの畑に
長野県上田市 山宮 孝 - 静寂の森で迷いて声出せば鹿が飛び出し勇気湧くなり
長野県松本市 長谷川 紀子 - 真新しい制服の袖の長すぎて桜の蕾くすりと揺れる
長野県塩尻市 折橋 玲子 - 姉さんと呼ばれて母は弟と語りて次第に姉さんになる
岐阜県飛騨市 横山 美保子 - 三脚に登り梅採る鼻先に抱卵の鳩身じろぎもせず
長野県松本市 永田 律子 - 震災の前に戻れぬ福島の吾妻の峰の夕焼けの色
福島県福島市 南場 君江 - 灯ひとつ消えたる限界集落に恋の季節の鹿の鳴く声
長野県長野市 中沢 保雄
入選作品「題詠」馬(8首)
- 水張り田に映りし白雲踏み砕き代掻きし馬も父も征きにし
岐阜県飛騨市 追本 妙子 - われのこと「駄馬」と笑いし父あれど訂正なさず逝ってしまえり
静岡県藤枝市 原田 綾子 - 放牧の木曽馬各おの名のありて母馬「未来」に仔馬寄り添ふ
長野県塩尻市 野村 みのり - ベーカー街を馬車にて走るホームズと同じ空気を吸ひけむ漱石
大分県中津市 桑田 圭子 - たてがみの有るものが好きなかんずく疾駆してゆく馬のたてがみ
東京都東村山市 中村 育 - 畑隅に傾く馬頭観世音今日も野花の換えられており
千葉県八千代市 吉田 早苗 - 殿町や馬場町があった我が城下歴史と名を棄てさくら市と化す
栃木県さくら市 大場 公史 - 「ゆきちゃん」は六人客乗せ馬車を曳き湯布院の町に生きていた
熊本県熊本市 佐藤 寿子
佳作「自由題」(12首)
- たかだかと桐の花咲きあなにやしえをとこの立つごときゆふぐれ
東京都文京区 矢澤 靖江 - をさなごの臓器それぞれ運ばれて六才未満の「未満」を思ふ
長野県下諏訪町 高木 萬知江 - 「人の世のつとめを果たし忠一は還りました」と告げ給うらむ
東京都練馬区 佐藤 次郎 - 副作用出ねば効果もなきと言ふ抗癌剤をなづみつつ飲む
新潟県佐渡市 石塚 多惠子 - 梅雨のあめ水の匂ひのみちる夜半われはひつそり鰓呼吸する
東京都清瀬市 四竈 宇羅子 - 湯上りの体重計の数値読む痩せたき吾と太りたき夫
兵庫県神戸市 河野 信子 - 津波去りし浜に残されたる破船名前のそばに玫瑰(はまなす)咲けり
秋田県大仙市 深町 一夫 - 山かつこうと呼びゐる花が郭公の来啼けば咲きぬわれの庭にて
長野県塩尻市 金井 たか - 病室に新緑の風吹きくれば父のミトンをしばし外せり
愛知県新城市 伊田 あや子 - さわやかな青森おばこ伴なひて青年帰り来るはつなつの風
長野県信濃町 猿谷 たかよ - 人と人人間もようが水彩の絵具のように今とけだした
長野県中野市 市川 寛
佳作「題詠」馬(14首)
- 代掻きに手綱をとりし遠い日よ馬のあゆみはやさしかりけり
埼玉県川越市 古川 正司 - ふるさとの乗合馬車の赤毛馬一等兵の馭者も還らず
千葉県茂原市 旭 千代 - 退院の夫の帰りを待つてゐる馬鈴薯の花咲き揃ひたり
長野県辰野町 米窪 貴施子 - あざやかな手綱さばきに水濠を軽々と越ゆ栗毛と少女
東京都世田谷区 宮尾 和子 - 馬上より射る矢はっしと的に入り紙吹雪散る近江流鏑馬
滋賀県守山市 佐伯 一惠 - 五分後に流鏑馬を射る若者は駒宥めつつ大きく息吐く
岡山県 津山市 矢野 康史 - 少年を乗せる初夏耳立てて観光用の木曽馬が来る
東京都八王子市 相原 法則 - 真夜中に回転木馬は夢を見る思いのままに野を駆けまわる
愛知県一宮市 原 佳子 - 白馬岳(しろうま)は雪形日々にあらたまり夏山の貌ととのえて立つ
長野県白馬村 吉澤 高光 - 敵陣へ桂馬並べて王將を脱出不能の角に討取る
長野県塩尻市 堤 榮一 - 呼ぶ馬に応える馬も霧のなか美ヶ原高原は夏
愛知県春日井市 笠井 忠政 - 松風のざわめく中にしんと立つ昭和がありぬ「軍馬の碑(いしぶみ)」
長野県塩尻市 雨宮 かず子 - 夏まつり馬上の少年あどけなくゆらゆらゆれて山門に入る
長野県大町市 滝沢 和子 - 馬車に乗り積荷となりて来たと言ふ祖母の嫁入り児童(こ)らは信ぜず
長野県木祖村 新村 亮三
奨励賞「自由題」(23首)
- をばさんが一人で守る郵便局簡易といへど世界に通ず
長野県安曇野市 矢花 彪二 - ペンキ塗る職人親子の屋根にゐてお国言葉の空にとび交ふ
長野県松川町 鋤柄 郁夫 - あぢさゐの量感に立ち止まりつつ水のにほひに風わたりゆく
大阪府豊中市 小島 督子 - 兎追い小ぶな釣りたる過去へゆく飯山線は一輌にして
東京都八王子市 相原 法則 - 台風に倒れ伏したる実り穂を抱き起こし刈り抱き起こし刈る
三重県多気町 高山 幸子 - 除草機押す夫の先々蝌蚪群れて田水煮え立つ峡の真昼間
長野県岡谷市 中島 則子 - 托卵の儀式終へしかほととぎす森のみどりを突きぬけて鳴く
鹿児島県日置市 室之園 てるみ - 呼捨てに吾よぶ唯一はらからの病む声小さし山鳩の啼く
長野県塩尻市 桃井 直子 - 結婚して知りたるひみつ逆立ちの出来ない貴方のかはいい弱味
島根県松江市 安部 歌子 - 人ならば九十過ぎの老猫を目を凝らし待つ花冷えの夜
長野県岡谷市 小口 英子 - 海野宿(うんのじゅく)の堀割浅く澄む水は三百年を音なく流る
茨城県東海村 猿田 彦太郎 - 脱皮してすでに戦士の顔をもつ四月の朝の駅の青年
東京都品川区 中原 兼彦 - 静脈を探し出さむと右腕を叩くナースの手のあたたかさ
群馬県高崎市 井田 善啓 - 春おそき木曽路の寺の地蔵尊むねに十字架いだきておりぬ
愛知県名古屋市 若松 嘉代子 - 水張れば一反ごとに空落ちて雲の間に苗納まりぬ
愛媛県松山市 園部 淳 - 自販機の「ありがとう」と云ふ声に振り向くわれに夕陽あまねし
長野県塩尻市 河野 千尋 - 逆縁の悲しみ滲む謄本を預りきたる書士業われは
徳島県徳島市 本田 守 - 吾が方をいちべつ宵の踏切りを孕んだ狸先にお通り
長野県飯田市 加藤 壽弘 - 雪形の欠けきて里は代田掻く北アルプスの嶺尖り立つ見ゆ
長野県塩尻市 下井 貞子 - ひとしきり物音のして階上から花びらのやうな児(こ)の笑ひ声
広島県広島市 三原 豪之 - 唇に血がにじんでると妻の云う百回吹いたら上手くなったよ
長野県塩尻市 清水 守人 - 千年余も千の手背負ひ越え来たる大き仏はどつしり座す
静岡県藤枝市 向島 すゞ - 卒業の日の夕刊を配り終へなじめる二輪車丹念に拭く
高知県高知市 高野 基都
奨励賞「題詠」馬(19首)
- 馬の目に雪は降るなりふるさとの山を恋しと母をこひしと
茨城県美浦村 石毛 惠美子 - 将棋指し孫を相手に桂馬跳ね喜寿を忘れてまったをかける
新潟県新潟市 小出 春己 - 雪五尺あれどぎつしりと屋根裏に乾し草ありて馬は橇曳く
東京都目黒区 石井 敏保 - 天保弘化年号消えたる碑もありて二十一基建つ馬頭観音
長野県松本市 小松 好子 - かたちよき瓜を選びてみ佛の黄泉路の旅の馬を作りぬ
山梨県南部町 北澤 みち - 馬は馬 牛は牛にて草を食む風渡る初夏美ヶ原
長野県塩尻市 赤羽 すえみ - 故郷へ還り得ざりし軍馬らの魂祀る碑に蝉時雨ふる
熊本県八代市 田中 綾子 - 立ちしまま眠れる馬がしゅわしゅわと蠅追ふ音が夜すがら聞ゆ
静岡県焼津市 定石 栄 - 春浅き塩尻峠の空暗く馬の背分ける雹に降らるる
長野県下諏訪町 古田 ぬい - 代掻きを終へたる馬の泥洗ふ夕陽のなかの父若かりき
長野県長野市 相澤 美恵子 - 馬の合う彼奴と俺はいつだって■(めくばせ:漢字「目」へんに「旬」)ひとつで駆け出していた
香川県善通寺市 森本 義臣 - 馬をりしあとかたもなき家なれど「馬車屋」の屋号に老い独り住む
千葉県館山市 藤井 昌子 - 馬が引く代掻き車に乗る祖父はれんげの中に小さな観音
長野県塩尻市 小野 宗昭 - 杳(とお)き日よ馬は家中(やなか)に飼はれ居てやさしき眼をして皆を見てゐた
兵庫県神戸市 瀧澤 久子 - かけ昇る馬の地中絵鮮明にメクサ古墳が崩れて出たよ
三重県津市 平井 絹代 - 忘れ得ぬ記憶のひとつベトナムで軍馬の寝藁干ししさいげつ
長野県南木曽町 植村 功 - 流鏑馬の的射ぬかれて宙に舞う春の神事に息詰めている
栃木県さくら市 青木 一夫 - 馬の目にゴールは見ゆるか芝の上(へ)を疾走して行く四ハロン前
神奈川県川崎市 和田 修子 - 杭州湾に人馬犇く戦争絵が亡父(ちち)アルバムに挟まりてあり
埼玉県鴻巣市 久川 康子
※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。