» 第27回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

第27回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

平成25年9月30日に開催しました
第27回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入選作品を発表します!!

最優秀作品(1首)

  • 温かい泥に潜つてどぢやうのやうに眠つてゐたい古里の川
    長野県岡谷市  今井 紀子

優秀作品(5首)

  • 桜散る光の中の古里の壊れしままに原発建てり
    福島県南相馬市  深町 一夫
  • 〈白鳥橋〉つひに架かりて冬晴れのつながりし湖周ジョギングロード
    長野県岡谷市  北原 夕子
  • 家持に恋しています現身の人にあらねば物怖じもせず
    長野県松本市 守屋 久見子
  • 満蒙に遺せる妻子墓誌に刻み何も語らず逝きし九十二
    長野県坂城町  柳澤 東子
  • ふるさとの山川語れば涕する移民は老いてアマゾンに住む
    長野県安曇野市  矢花 彪二

入選作品「自由題」(6首)

  • 額と額つけて明日征く馬の瞳に生きよと言いき還らざりけり
    北海道美唄市  佐藤 英子
  • 試合終へポニーテールをばさり解く少女はあどけなき面輪になりて
    東京都江東区 小藤 和子
  • わが家の鼠ちょろりと顔を出し餌も運ぶが酒も飲むらし
    長野県塩尻市  雨宮 かず子
  • アルパカが二頭で歌うよ空見上げチロルの森はさくら満開
    長野県塩尻市 茅野 範子
  • 萱草かく鮮やかな橙色に咲かねば人を忘れられぬと
    富山県黒部市 山口 桂子
  • 赤紙を怖れて若く酔ひ痴れし夜桜の樹下に生きて歌詠む
    高知県高知市 高野 基都

入選作品「題詠」川(9首)

  • 川の面に火屑はあかくふりそそぎ疲れたる鵜が呆然とおり
    埼玉県川越市 古川 正司
  • 落日の後なる川の輝きを鎮めるやうにカヌー流れ来
    千葉県市川市  大河内 卓之
  • 丸子橋あかりの灯る夕まぐれ多摩川上空鸚哥むれゆく
    神奈川県川崎市 近藤 けい子
  • 春耕の田植の準備ととのひて川より入り来る水生きいきと
    長野県塩尻市 荻上 淑子
  • 紫陽花の咲く川べりを黙しゆく昨日逝きたる人想ひつつ
    長野県佐久市 佐々木 都
  • ぞくぞくと黒き背見せて霜月の川幅満たし鮭のぼりくる
    長野県池田町 中山 都子
  • 川底の石ことごとく透く水に潜りゆく子の足裏の白さ
    三重県多気町 高山 幸子
  • 埋められし浪花の川に沿ふ道かバス停いくつも橋の名つづく
    大阪府堺市 梶田 有紀子
  • 朝霧の閉ざす川面に鴨の声聴きてドイツを離れ来たりき
    福岡県うきは市 大津留 直

佳作「自由題」(12首)

  • 万歳のポーズで眠る子のためにバンザイしない今日に、ばんざい。
    東京都世田谷区 丸山 朱梨
  • 詐欺電話騙されたふりで聞きをればふつと心の隅に湧く欲
    長野県下諏訪町 植松 七恵
  • 今年こそ逢ひたいですねと書き添へて炬燵に一人年賀状書く
    長野県塩尻市 折橋 美津子
  • こだわりもなく「靖国」に玉串を捧げし日あり十五歳の夏
    長野県長野市 島田千鶴子
  • 見つけたのかわいいつぼみがほらここにいつ咲くのかなぼくの朝顔
    長野県塩尻市 高山 雪
  • 冬空へ光のシグナル送るだろう信大衛星「ぎんれい」発つ日
    長野県松本市 原 健一
  • 槍ヶ岳見ゆる丘一面の蕎麦の花山風を得て小さき波打つ
    長野県塩尻市 原 保次郎
  • 田草とる葉ずれの顎にしみる汗ふとあげし目に母見て立たす
    静岡県浜松市 仲村 正男
  • 玲瓏と入り日きららぐ湖の面に黄の光うつし匂ふ榲桲(まるめろ)
    大阪府箕面市 大野 美恵子
  • 働きて働きてあと寝たきりの母の命の重くあたたか
    大阪府高槻市 関谷 佐代子
  • ふた呼吸は遅れる返事待ってみる必死に動いてるねあなたの脳は
    兵庫県三木市 竹谷 墨絵
  • ほうほうと山鳩の鳴く夕間暮れ甘蔗の花咲く故郷を恋う
    沖縄県那覇市 新垣 和子

佳作「題詠」川(13首)

  • 雨あがり栗山川の水高く太りし鰻潜ませている
    千葉県千葉市 石井 春子
  • 水源の涵養林に濾過されて豪雨のあとも濁りなき川
    神奈川県横浜市 河原 照子
  • 川の水取り入れ口の決められて三寸口と言ふ屋号が今も
    長野県塩尻市 青木 豊子
  • 見おろせる川辺の柳青みきて退院の日に心せかるる
    長野県塩尻市 金井 たか
  • 切通しを抜けて野の川ひとつ跳び友は早蕨とどけくれたり
    長野県宮田村 河井 房子
  • 今日もまた「春の小川」に沸き立つとデーサービスで働く娘笑む
    長野県長野市 杉田 小百合
  • 奈良井川に沿いて広ごる早苗田に白鷺雲のごと羽休め居り
    長野県塩尻市 塚原 愛子
  • 包む掌に揺れるともしび 広島の夕べに光の川となりゆく
    長野県伊那市 東野辺 一馬
  • 桃介橋の川の底なる石の面(おも)人の顔あり蛙の形あり
    長野県松本市 原 美奈子
  • 暴れ川の異名持ちたる姫川の源流に透く梅花藻の花
    長野県塩尻市 南澤 豊美
  • 東京へ明日帰る孫胸に抱きたんぽぽ小川に流して遊ぶ
    長野県茅野市 宮澤 雍徳
  • 雪しろのゆるく流るる荒川を鰭あらはして鱒帰りくる
    新潟県新発田市 桐沢 茂
  • 夏空をうつす川の瀬緋目高は孕みの影を小石におとす
    大阪府池田町 太田 省三

奨励賞「自由題」(25首)

  • よろこびを体で現す少年の側転、バック転、スライディングセーフ
    北海道稚内市 及川 文子
  • 動かざる大時計が主のごとくゐて昭和の匂ひ残る回廊
    青森県八戸市 木立 徹
  • 自らの腸と皮膚とを切り取りて塞ぎし喉と筆談に聞く
    宮城県仙台市 角田 正雄
  • 遺棄したる牛の囓りし角柱の間あひだに白骨の曝る
    福島県福島市 今野 金哉
  • 引退せしボス猿のごと山奥にひとりひっそり暮らすのもよし
    茨城県ひたちなか市 大森 俊造
  • つぎつぎに役職解かれしわが夫の今朝はトマトの脇芽を摘めり
    栃木県那須塩原市 高松 三枝子
  • 生れてより聞き慣れて来し秩父弁文字に記せばいと可笑しかり
    埼玉県秩父市 小泉 富美子
  • 砂時計の括れの如き今日と云ふ一日を潜り改札を出る
    千葉県市川市 大河内 卓之
  • このひでりいつまでつづく吾が茄子がたつた一つの小さき実を持つ
    山梨県笛吹市 窪田 喜久子
  • 朝の日が紅葉はじく単線路五分遅れて電車は着きぬ
    山梨県北杜市 山口 明美
  • 早乙女と紹介されて肩すぼめ学童と田植八十路の母よ
    長野県飯田市 北村 咲
  • 惑う時亡き師の言葉反芻し模索し歩む考古への道
    長野県塩尻市 小林 康男
  • 曇り空の一日なれどカッコウの鳴く声聞けば梅雨明け近し
    長野県松本市 前田 佐知子
  • 薔薇の花の垣根に囲まれ住む人の家の中よりカレーの匂ひ
    長野県岡谷市 間澤 勝子
  • 御無沙汰の実家訪ぬれば柿の木の四角き花が肩にこぼれ来
    長野県塩尻市 宮坂 栄
  • 倉庫には春の肥料を積みあげて八十二歳も心が逸る
    長野県泰阜村 宮沢 一
  • 通学路の「みどりのおじさん」引き受けるしばしを暮らす孫らの町に
    長野県松本市 横山 喜三郎
  • 甲高い声張りあげる鵯よ俺は日本語 英語も少し
    愛知県東海市 久野 利典
  • お田植えの済みたるばかりの田に立ちて鷺は大きく足を踏み出す
    愛知県一宮市 原 佳子
  • 給食のカレーの匂い流れきて九九の暗唱リズム生まれたり
    三重県多気町 高山 幸子
  • エアコンをおまかせモードにしたままなり今頃エアコン何してるだらう
    岡山県岡山市 角南 やす子
  • 入ったら引き返せないけもの道お前を連れてあの森へ行こう
    山口県山陽小野田市 田代 耕二
  • 五歳児の夢は無限に膨らみてあすは怪獣と決闘するらし
    徳島県石井町 後藤田 靖子
  • 「60年安保」倦みて犬吠の岬に佇ちし焦燥の日よ
    沖縄県糸満市 平良 宗子
  • 真夏日にひとり葡萄の粒を抜く若き果汁の香が吹き抜ける
    長野県塩尻市 山田冨美子

奨励賞「題詠」川(24首)

  • 眠れぬ夜川の音がさやさやと聞こえていたっけ亡き祖父の家
    北海道札幌市 笹崎 未歩
  • 火祭りは冬の入り口、須賀川の松明は秋の夜空に躍る
    埼玉県秩父市 小泉 富美子
  • 千曲川源流星の降る村に宇宙飛行士油井さん育つ
    長野県佐久穂町 石井 雪子
  • お伝馬とて各戸一斉の川浚ひ山住み部落に春は来にけり
    長野県塩尻市 市川 静代
  • 笹舟を流して遊ぶ子等の声青葉清しき川面にひびく
    長野県松本市 田島 祥恵
  • 常念岳に生れし川水輝きて植え終えし田を満たし行くなり
    長野県松本市 常盤 幸子
  • 深紅なる小川の岸の田植ぐみ夫と食みつつ野道を帰る
    長野県岡谷市 中島 則子
  • 車窓よりアムステル川を眺め入ればマヘレのはね橋いま陽に輝けり
    長野県松本市 中野 寛人
  • 土砂降りの雨に嵩増す犀川の瀬音とどろく闇の狭間に
    長野県安曇野市 花村 千世
  • 遠き日に鮭も来しとふ奈良井川山女の稚魚を子らの放てり
    長野県塩尻市 水野 強
  • 魂送りの灯籠ゆらぎ天竜の暗き川面を仄かに照らす
    長野県高森町 宮外 みどり
  • 依田郁子偲ぶ旅なり千曲川渡り丸子の実家目指して
    福岡県添田町 濱田 イサオ
  • 黒部川水防演習の岸に立つ夫の遺影を胸に抱きて
    富山県黒部市 女川 節子
  • 地の灼けしにほひ漂ふ夕まぐれ川面しづかに闇迫り来る
    福岡県福岡市 溝田 ひろむ
  • 護岸工事いまだ終はらぬ那珂川に雨降り止まぬ水嵩無気味
    福岡県那珂川町 二之宮 禮子
  • 中洲より煙たつごと萌え出でて柳ふくらむ大井川ゆく
    静岡県藤枝市 秋山 尚子
  • 苔蒸せる丸太の架かる小さき川蟹一匹の渡り終えたり
    島根県浜田市 白根 佐知江
  • ライン川を下れば見ゆるローレライ魔の歌聴こえず明るき九月
    岐阜県下呂市 小林 久子
  • 培ふ堆肥は高梁川の葦といふマスカット葡萄つやめきてをり
    岡山県倉敷市 香川 芙紗子
  • 日焼けした子がはじめての秘密もつ小川の葦のほたるのありどを
    愛知県春日井市 川島 信
  • 悠悠と北川に立つ白鷺の足もとに映る新緑の山
    福井県若狭町 宮川 直美
  • にこにこと笑顔を交すおはように「田川の郷」の介護始まる
    長野県塩尻市 米窪 昭
  • パソコンを泳ぎし指が連休の小川で田植えの泥靴洗う
    徳島県阿南市 森岡 圭子
  • 斉魚漁に網打つ人の小舟見ゆ筑後川鉄橋渡りゆくとき
    福岡県大牟田市 西山 愛子

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。