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第28回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

平成26年9月27日に開催しました
第28回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入賞作品を発表します!!

最優秀作品(1首)

  • 春を待つ吉江孤雁の大欅宿木ほつこり渦巻きてゐる
    長野県塩尻市 濱 すみ子

優秀作品(5首)

  • いと小さき虫の結婚式ありて雑草の葉に子の子と祝ふ
    長野県松本市 平林 加代子
  • 廊下には綺羅星光る大ツリーしずかにふけゆく小児病棟
    京都府城陽市 近藤 好廣
  • 盲導犬の使命果さむ“ドリーム”の発ちゆく朝を娘らと見送る
    福岡県福岡市 宮口 頌代
  • 嘉門次の宿の灯りに見送られ朝露ふみて東壁のぼる
    長野県塩尻市 百瀬 義信
  • 徘徊者さがす有線流れきて大夕焼けは宿場をつつむ
    岐阜県岐阜市 加藤 シズカ

入選作品「自由題」(9首)

  • アーウーアー娘を真似てアーウーアー寝返りすれば一緒に転がる
    長野県山形村 川上 俊之
  • 夕闇の稲田の上を越ゆる風祭り囃子の習ふ音乗す
    長野県塩尻市 堤 榮一
  • ジュゴン棲む珊瑚の海を守らむと指笛鳴らす名護の明るさ
    長野県諏訪市 野明 芳
  • 春キャベツ山盛りにして一人食(は)む今日よりは夫の分も生きなむ
    長野県塩尻市 福井 妙子
  • 「車椅子よりあなたがいいよ」と両手出し看護師と共に嫗は歩む
    新潟県柏崎市 室住 智子
  • フォーラムの余韻に帰りの列車待つ塩尻の駅葡萄の香する
    富山県富山市 大伴 拓
  • 青く白く闇に流るる細き糸蛍の恋に人は動かず
    静岡県袋井市 荒野 学
  • 植ゑ終へし稲田を渡る風の音しばらく聴きて居酒屋へゆく
    静岡県焼津市 増田 晴夫
  • 竈(くど)の香(か)がするねと湯気の中で君新米の碗受け取りて言う
    奈良県奈良市 島本 太香子

入選作品「題詠」宿(6首)

  • 軽トラを宿の代りに戻り来て墓を洗えり津波の浜に
    福島県南相馬市 深町 一夫
  • 台湾の留学生の宿として三十余年の交流つづく
    埼玉県秩父市 坂本 公平
  • 宿坊の朝の勤めを英訳し護摩焚く僧を囲む携帯電話(けいたい)
    長野県塩尻市 折橋 玲子
  • 古宿の欄干にもたれ聴く盆踊り歌その哀調に「清光館哀史」をし思ふ
    長野県塩尻市 北澤 智彦
  • 日曜のテレビ電話の奥の方で一年生が宿題してる
    長野県飯田市 木下 瑜美子
  • 顔踏みて過ぎし鼠の足裏の冷たきに覚む遍路の宿に
    静岡県浜松市 仲村 正男

佳作「自由題」(13首)

  • 写真にはよそ行きの顔鏡にはいつも素顔の私が写る
    青森県八戸市 軽米 一恵
  • 未除染の庭の見えざるβ線γ線のなかに草引く
    福島県福島市 黒澤 聖子
  • 八十六の母の長湯を見にゆけばナンチャラホイと木曽節聞こゆ
    千葉県茂原市 河野 誠一郎
  • 昼下りフルートの音の涼やかに戦知らぬ子の八月終る
    東京都世田谷区 狩集 祥子
  • 牡丹(ぼうたん)の頽れさうなる心地せりだあれもゐないふる里の家
    東京都江東区 小藤 和子
  • 家持は鰻をめせとのたまへど絶滅危惧種となつてしまへり
    東京都町田市 谷川 治
  • 癒せざる重きかなしみ閉じ込めて立ち並びいる仮設住宅
    長野県佐久市 臼田 宇多子
  • 湧水のあふるる城下めぐりゆく草間彌生のバスの水玉
    長野県松本市 衣川 朝子
  • 木の陰に涙描き足すピエロいて白夜の街に塔の鐘鳴る
    長野県塩尻市 塚越 里子
  • 蒸し蒸しと寝苦しき夜の松本サリン今もまざまざ河野さん思ふ
    長野県松本市 永田 律子
  • 朴葉寿司うまかったとただそれだけを言いて切れたり父からの電話
    岐阜県飛騨市 横山 美保子
  • 溶銑の千五百度の火照り受け無事故守りし職場今日去る
    兵庫県相生市 後藤 政基
  • 女三瓶(めさんべ)てっぺんから見る山々の霧はれゆきて吾は天下人
    広島県尾道市 山崎 尚美

佳作「題詠」宿(12首)

  • 昇る月は大きく見える広重の洗馬宿柳の月も大きい
    山形県米沢市 富川 義朗
  • 番傘で馬籠の雨を聞きたくて下駄をつっかけ宿を飛び出す
    福島県西会津町 上野 昭男
  • 大輪の菊に宿れる蛙(かはづ)の子まだ保護色になりきれずゐる
    千葉県市川市 大河内 卓之
  • 「うまいずら」「蕎麦のおやき」の奈川村古宿おもふ荏胡麻いりつつ
    長野県塩尻市 飯田 美枝
  • 朝焼けのマッターホルン見る為の一夜の宿のカーテン開ける
    長野県佐久市 内藤 洋子
  • 塩尻宿「いてうや」の襖に咲きにほふ古人の祈りし桜
    長野県塩尻市 中神 元子
  • 洗馬宿は四百年をたつ今も常の暮らしに屋号呼び合ふ
    長野県塩尻市 原 やゑの
  • くちなしの葉先に宿る揚羽蝶羽展げしまま朝の風待つ
    三重県伊賀市 出後 幸子
  • ピレネーの巡礼宿の望(もち)の月磔刑像を照らして蒼し
    大阪府高槻市 柿沼 功
  • 天蛾(すずめが)の硝子打つ音耳に慣れいつしか寝入る山峡(やまかひ)の宿
    兵庫県神戸市 瀧澤 秀人
  • 西成のしごと細りて宿(どや)友が酔っては歌う「いつでも夢を」
    兵庫県神戸市 吉本 輝彦
  • けんかした後の散歩でつなぐ手に何かが宿るような気がする
    岡山県瀬戸内市 小橋 辰矢

奨励賞「自由題」(24首)

  • 昔日に何を抱きしか菩薩像両の腕朽ち微笑みて在り
    宮城県仙台市 佐藤 惠子
  • 帰ろうと車椅子の父せがむたび階段までを押してゆく母
    宮城県仙台市 角田 正雄
  • この夕べ暖簾をくぐる三陸の海鞘を肴に飲む酒うまし
    宮城県石巻市 大和 昭彦
  • 朝露の光に濡れて飛ぶ蝶の津波瓦礫の靴にとまりぬ
    福島県南相馬市 深町 一夫
  • ころころと三兄弟の蚕豆よ酒に溺れし兄想いおり
    茨城県行方市 額賀 旭
  • この道はわが宿命の道なりとめげずに今日も短歌(うた)を詠みゆく
    東京都清瀬市 石井 孝
  • 朝陽さす青葉の森より湧き出でて柳の絮はゆるくとび交ふ
    東京都豊島区 吉田 員子
  • 怒り込めテレビ見てをり三年を経て稲づくり出来ぬ田んぼを
    長野県塩尻市 青木 豊子
  • 若き日の眩しき笑顔病む妻に戻れと願う三年目の春
    長野県塩尻市 金井 半次
  • 湖の見ゆる風そよぐ原に好きなだけ大きくおなり三本のポプラ
    長野県岡谷市 北原 夕子
  • 雪形の種蒔き爺が大きく見え今日小学校のプール開き
    長野県伊那市 高橋 忠
  • いにしえの邂逅(あふた)の清水に歩を休め広重描く景色眺めむ
    長野県塩尻市 武居 文夫
  • 過疎の地も今日は賑わう村まつり神楽囃が峡に谺す
    長野県小川村 西沢 利通
  • 職場では憚りできぬ歌談義 塩尻の宿に更けて語らう
    長野県泰阜村 松島 房子
  • 登り来し神坂峠は秋の色アサギマダラが群れて飛びゐし
    長野県飯田市 山田 ふみ
  • 妻逝きてひとりぐらしとなりし家門(かど)にあふるる藤のむらさき
    長野県塩尻市 米窪 美和子
  • 楽しみは夫の寝息を聞きながらワイン傾け短歌読むこと
    岐阜県土岐市 高柳 惠美子
  • 百年(ももとせ)を生き来し母は母でなく眠れるときにわが母となる
    静岡県磐田市 川島 敬司
  • 柏餅の葉つぱめくれば遠き日の亡母(はは)の乳房の温み思ほゆ
    愛知県碧南市 岡田 銕夫
  • このまちのきっとどこかにおかれてる青き空へのラセン階段
    兵庫県神戸市 吉本 輝彦
  • 命令形のメール届きぬさまざまな老いの姿を見てゐる娘(こ)より
    山口県岩国市 木村 桂子
  • 並みよろう白き山脈(やまなみ)見えるとう転居の友の信州便り
    山口県岩国市 西村 恵子
  • 賑々と花鞍、首玉飾りつけ田に入る牛ら大花田植
    山口県岩国市 山田 千代子
  • 果樹園の荒草刈らむ梅雨晴れに十二鞐(こはぜ)の地下足袋を履く
    熊本県水俣市 中村 和博

奨励賞「題詠」宿(29首)

  • 山の宿に昼をいこへば時鳥仏法僧の鳴くが聞こゆる
    山形県鶴岡市 大沼 二三枝
  • 太古なる会津は海の底なりと伝わる宿の塩からき湯よ
    福島県棚倉町 小林 綾子
  • 天地(あめつち)に宿れる恵み賜りつ九十一歳今日も畑鋤く
    埼玉県上里町 小暮 正雄
  • 叔父逝きし戦地を叔母と訪ね来て宿より眺む東シナ海
    東京都世田谷区 狩集 祥子
  • 解禁をあすに控へて鮎の宿自慢の竿が勢揃ひせり
    東京都町田市 谷川 治
  • 神はみな小さきものに宿るらし古刹のくまみに菫草咲く
    神奈川県藤沢市 由田 欣一
  • 故郷は魂かへる終(はて)の宿吾行く先は佐渡の宿根木(しゅくねぎ)
    長野県塩尻市 有田 雅春
  • 軽塵を夜来の雨が鎮めゆく西安の宿の柳色新た
    長野県松本市 今村 芳巨
  • 宿場へと行き交ふ人馬を癒しけむ牛首峠に湧く岩清水
    長野県辰野町 遠藤 やす子
  • 宿帳に一家四人の名前書くこの幸福(しあわせ)がいつまでもあれ
    長野県長野市 田村 春山
  • 旅の人峠を越えて奈良井宿先づ水舟に喉潤せり
    長野県塩尻市 堤 榮一
  • 兵隊の宿舎になりし隣家の忘れられないあのラッパの音
    長野県高森町 中島 正子
  • 雨月なれ村の湯宿の閉館に別れを惜しみ村人寄れり
    長野県宮田村 牧田 孝平
  • 宿場町しづもる峽の梅雨明けて老鶯の声しみ渡りゆく
    長野県塩尻市 丸山 健三
  • 首欠けしマリア地蔵も拝みて奈良井の宿をじっくり歩く
    長野県 松本市 横山 昌子
  • 峽里(かいり)とふ名に惹かれ来し山宿は蕨・楤(たら)の芽膳をにぎはす
    新潟県新発田市 伊東 敦子
  • 囀りも瀬音も聞かず夫眠る畑終へて来し山の湯宿に
    新潟県新発田市 渋谷 和子
  • 熱燗と料理に秘湯の宿更けて互いに知りあう知らざる面を
    新潟県柏崎市 室住 智子
  • 手の中にかなへび持ちて遊ぶ子と馬籠の宿の坂を歩けり
    岐阜県中津川市 赤尾 袈夫
  • 木曽山系奈良井宿の分水嶺初冬の雨は定まらずふる
    岐阜県恵那市 鈴木 喜一郎
  • 癌手術おはり退院の朝の庭ふむ土ふはりと春を宿せる
    京都府城陽市 近藤 好廣
  • 水張田になびく早苗のうすみどり夜は水面に月影宿す
    京都府福知山市 阪根 まさの
  • にっぽんの旅が縁(えにし)よ異邦人老舗の宿の女将(おかみ)となりぬ
    大阪府岸和田市 向井 靖雄
  • 同宿の人らと登る神社まで二千四百四十六段
    兵庫県朝来市 小島 美智子
  • 樹齢三千年の屋久杉見終へ辿り着く縄文杉のレプリカ立つ宿
    岡山県倉敷市 香川 芙紗子
  • 母の里は今もほそぼそ宿商ひ出雲街道旧戸川宿
    岡山県津山市 矢野 康史
  • 河鹿鳴く涼しき沢の宿坊へ師に招かれし山深く来ぬ
    広島県呉市 月原 光政
  • 宿敵のカラスの監視受けながら野菜畑にネット張り終ふ
    山口県岩国市 木村 桂子
  • 行き暮れて足摺岬に宿とれば地をゆるがせる海鳴りの音
    徳島県石井町 後藤田 靖子

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。