» 第29回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

第29回 全国短歌フォーラムin塩尻 入選作品

平成27年9月26日に開催しました
第29回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入選作品を発表します!!

最優秀作品(1首)

  • 通勤の車のハンドル握る手は息子を叩いてしまった手なり
    長野県岡谷市 増澤 仁美

優秀作品(5首)

  • 自動ドアに写れる夏の大き雲二つに裂けて人這入りゆく
    茨城県坂東市 針谷 匡郎(匡は正しくははこがまえに玉)
  • 雪深き牛伏寺(ごふくじ)の坂上り来て力のかぎり鐘ひとつ撞く
    長野県塩尻市 小野 みや子
  • 薪となり園に積まるるぶだうの樹農諦めの証のごとく
    山梨県甲州市 廣瀬 妙子
  • 栗の木に穴ぼこ三つ穴ぼこに居さうで居ない春の梟(ふくろふ)
    福岡県大牟田市 西山 博幸
  • おだやかな木陰になって前庭に立っているから揺れているから
    埼玉県所沢市 山名 聡美

入選作品「自由題」(7首)

  • ひらがなの手紙でごめん鉄分が減るのよアタシ漢字書いたら
    岡山県瀬戸内市 小橋 辰矢
  • ハレの日の花束に百合の匂いせり きっとあなたもいるのでしょうね
    長野県塩尻市 牧野 令
  • わたくしの詰め替え用はありますかやさしさかなり減ってきてます
    愛知県半田市 榊原 めぐみ
  • おれたちのすべて無かったことにして旅立つ君は幸せであれ
    東京都足立区 坂口 大五道
  • 「ほんなこつ何もしよらん父ちゃんは!」元気にぼやく鹿児島の姑(はは)
    島根県松江市 大野 明美
  • 飼い主に媚びない猫に媚びる我 生暖かい黒南風が吹く
    群馬県館林市 本川 ミヤ子
  • 痴呆ではないと何度も母言えり人の名花の名風が攫うと
    岐阜県関市 伊藤 かえこ

入選作品「題詠」木または樹(8首)

  • 在りし日の立松和平禿山に苗木を植えて今緑なす
    栃木県さくら市 青木 一夫
  • 朝焼けに真っすぐ走る少年の木製バットは肩でおどって
    長野県塩尻市 熊井 友里
  • 何度めの集配車かなポスト前街路樹越しの図書館の席
    山口県下関市 佐々木 みどり
  • 幹のなか吸ひ上げらるる樹液のやうエレベーターで屋上へ向かふ
    千葉県八千代市 一戸 光代
  • 紫陽花の木をのぼりゆくでで虫よ どこまで行つても花にはなれぬよ
    秋田県秋田市 加藤 トシ子
  • 仰ぎ見る山や樹の無き沖縄に米軍基地の射撃場の森
    沖縄県那覇市 喜久村 京子
  • 九十二年女系家族の我家に生まれし男の子樹(いつき)と名付く
    長野県安曇野市 高橋 雅子
  • 君といる春の波長の夕映えに里の樹々の芽ほどける音す
    奈良県奈良市 島本 太香子

佳作「自由題」(15首)

  • 火照るほど人を想ひし杳(とほ)き日のきみは眩しく五月のひかり
    岡山県津山市 矢野 康史
  • 地下足袋が嫁入り道具でありしこと孫に話せる昔の話
    長野県高森町 小林 邦子
  • 仲良しの証のごとく連弾に揺るるふたつのポニーテールよ
    鳥取県米子市 生田 麻也子
  • むごいのはうつろな文字だ「言霊の幸わう国」を忘れたひとの
    長野県塩尻市 青木 蘭奈
  • 横長のテレビを黒く縁どりて再放送の義士伝を観る
    千葉県我孫子市 小熊 宗克
  • ハルニレのテラスに語らふアダムとイヴ風の私は枝を揺らせり
    長野県岡谷市 北原 夕子
  • 塩水をぐっと飲み干し八十路の夫出荷の葱に土寄せてゐる
    長野県松本市 洞澤 淑子
  • ソファシッシシー遠くしき啼く雉鳩の雌に交代知らす子育て
    東京都品川区 中原 兼彦
  • 長元坊(ちょうげんぼう)今年も来たりて小学校(がっこう)の空気口より雛顔見せる
    長野県伊那市 高橋 忠
  • 擬音語の水玉となり踊つてる梅雨を楽しむ孫の短歌は
    長野県塩尻市 松沢 美和
  • 髪を切ったら見せに行きますと言ったのにまだ切らない私来月は切ります
    長野県松本市 濱野 みふゆ
  • 思ひ立つ日が吉日と直ぐ動く友ゐてけふは入笠山(にゅうがさ)に立つ
    長野県塩尻市 岸田 千恵
  • 落下してジャンプの鯱が割る水を浴びた気分だキスに目覚める
    三重県東員町 太田 美千子
  • 支柱根(しちゅうこん)板根(ばんこん)膝根(しつこん)立てまはし生命(いのち)育むマングローブは
    兵庫県神戸市 瀧澤 秀人
  • 冬の陽に温もる手摺たよりつつ我が家へ続く坂道あゆむ
    東京都あきる野市 宮田 竜子

佳作「題詠」木または樹(10首)

  • 初夏の午後木の葉は風に揺れていた言葉の意味の息づく如く
    京都府城陽市 島本 慶徳
  • ずつしりと『竹山広全歌集』新樹にこころを休めつつ読む
    長野県坂城町 水木 千草
  • 買ってきたなえぎを植えて思うこといつかきれいな花が咲くこと
    長野県塩尻市 北原 誠人
  • あの尾根の弛みが白膠木(ぬるで)峠だよ苔の生えた狢が棲んでたさうな
    長野県塩尻市 市川 静代
  • 足びきの山なし小なし野辺山の五月の風に花ふりこぼす
    山梨県北杜市 山口 明美
  • 山狭に檜の苗木をかなしみぬ植ゑれど植ゑれど鹿が食むなり
    長野県塩尻市 土田 安子
  • 樹の下にわけあり夫婦住みついて時代小説はじまりである
    東京都八王子市 相原 法則
  • 真夜なれば木口版画の魚一匹(び)額より出でて泳ぐかまぼろし
    愛知県名古屋市 西岡 法子
  • 折れさうな心にあてる副木のやうにと思ふ君の手のひら
    埼玉県坂戸市 高橋 元子
  • 城跡へ近道といふ樹々の間をもつれあいつつ蝶のつきくる
    長野県塩尻市 塚越 里子

奨励賞「自由題」(23首)

  • お立ち寄りご遠慮くだされ八重垣に妻も籠もれり我も籠もれり
    長崎県長崎市 西部 稔
  • スコップに穴掘るさまを見下ろして鴉はときおり親しげに啼く
    山口県岩国市 弘兼 安雄
  • さとうきび畑の眠る幾万に祈りを込めて島唄うたう
    長野県塩尻市 丸山 寿子
  • 砂場より出できし蛙陽の中の孫の手くぼにちんまりとゐる
    長野県小諸市 田中 邦
  • 納得のゆくまで問ひし若き日や知らずともよしを知る八十歳
    長野県塩尻市 桃井 直子
  • 聡明(さわやか)に老なむと薄き紅をひき耳しいし吾も会話の中に
    東京都立川市 松元 智子
  • なぜだろう砂が詰まって故障した懐中時計夢に出てくる
    三重県名張市 相川 高宏
  • 生かされし畏れと力湧く朝明雪消の庭に四股踏んでみる
    長野県塩尻市 清水 守人
  • たんぽぽのわた毛飛ばして子供らは夕日の中を駆けて行くなり
    長野県箕輪町 市川 光男
  • タラ・ウコギ新芽の香り携えて長距離バスで友帰り来る
    東京都立川市 小町 信子
  • むかし観し映画「ひろしま」が重なりて読みつつ苦し『とこしへの川』
    長野県坂城町 水木 千草
  • 人参の芽は針ほどにちくちくと土の中から命を擡ぐ
    山梨県北杜市 佐藤 幸子
  • アカシアの白き花咲く城山はうぐいすも鳴くやすらぎの園
    長野県松本市 田口 里海
  • (どこいくの)喪服に毛を付け猫もまた父の身震い知ってるらしい
    長野県伊那市 原 千春
  • やれやれと晩酌のグラス手にすればチェンソーの震へ指に残れる
    長野県高森町 乾 百樹
  • ざらざらの画用紙の上を滑りゆく真っ直ぐな君のこころの鉛筆
    長野県諏訪市 宮澤 恵子
  • 柿若葉のそよぐ早朝がらり戸を開くればわれに古稀が取り付く
    岡山県倉敷市 香川 芙紗子
  • 縁側でお茶をすすって穏やかに百年あなたと暮らしたかった
    北海道稚内市 及川 文子
  • 風無き日に風をとらへて飛び立てる日々の始まりそれが卒業
    大分県大分市 金澤 諒和
  • しのび寄る老いに抗うわたしには四歳上の夫がおります
    愛知県東郷町 三宅 純子
  • その風に耳たぶのない耳ゆらし猫の子ひとり終活の家
    長野県塩尻市 渡辺 憲生
  • 重力に海は静かに引き寄せられ月はのぼり来(く)ゆふやみ押さへ
    大阪府枚方市 篠原 節子
  • 駅員も踏切番もいなくなり車掌もいない電車は走る
    長野県中野市 太田 舛次

奨励賞「題詠」木または樹(26首)

  • 雪壁の道擦違ふものもなく野兎(やと)の足跡花のごと付く
    新潟県津南町 鈴木 綾子
  • 五千回新芽を吹きし縄文杉木肌の瘤に力みなぎる
    三重県志摩市 廣岡 光行
  • たかく高く積みたる積木をハイハイの小さきてのひら一気に倒す
    岐阜県関市 伊佐地 博子
  • 木星と輪っかのように君とわれ一緒に居れたら居れるのならば
    北海道札幌市 笹崎 未歩
  • 蘖(ひこばえ)の蜂屋花咲き稔るゆへ今年必ず我が癒ゆるべし
    富山県富山市 大伴 拓
  • 猿麻桛(さるをがせ)垂るゝにまかせ老木の息深々と霧にしづもる
    大阪府大阪市 桝井 幸子
  • 職ひきし君は樹木医古里の名だたる櫻を変若(を)ち返し逝く
    愛媛県西条市 日和佐 紀子
  • 冬木立仄かに染めし夕映えに獄の静けさ極まる如し
    大分県大分市 長畑 孝典
  • おがくずにまみれ鋸挽く父の太き腕が木を匂はせる
    長野県上田市 木下 由美
  • 七十年目の被爆アオギリ段丘に木陰をつくり幼あそばす
    長野県高森町 小林 正人
  • 廃校の銀杏の大木倒されど子等の声恋い青葉をゆらす
    奈良県宇陀市 大畑 美千代
  • 幼木を植えて幾年マロニエの数多の花の咲きて吾は老ゆ
    北海道札幌市 橋本 とおる
  • 宿り木を三つも抱きて冬空にたっぷりと立つ槻の大樹は
    東京都東村山市 中村 育
  • 下枝打ち済みて明るむ杉木立うぐいす鳴けりきびたき鳴けり
    静岡県静岡市 西田 房子
  • 参道の木立の高みに郭公とエゾハルゼミの鳴き声渡る
    長野県松本市 百瀬 領子
  • 板敷きの木目節目の大広間 這ひ這ひの子が止まつてはなぞる
    長野県塩尻市 川上 みよ子
  • 裏山の欅の大樹伐採され今宵は聞こえぬ梟の声
    長野県長野市 大澤 美惠子
  • 然う言へば「もちもちの木」と呼ぶ栃は未だどつしりとゐる学舎の前
    長野県塩尻市 折橋 玲子
  • 山裾を一両列車がトコトコと夕日に送られ木立に消え行く
    長野県塩尻市 三溝 みい子
  • チェーンソーのエンジンの始動初講座 鉢伏を背に林業女子会
    長野県塩尻市 丸山 寿子
  • 人生で突き当たるのは壁で無く実は大きな樹かも知れない
    三重県名張市 相川 高宏
  • 成るべくしてなりしなどとはおもはねど峡の長(おさ)にとおさまる朴の樹
    兵庫県佐用町 江見 眞智子
  • 始発駅言葉短かく別れありベンチにすわり樹を見ていぬ
    熊本県荒尾市 石塚 あかり
  • 山深く入りて切り出す樅の木は神に供える御柱(みはしら)となる
    長野県諏訪市 野明 金一郎
  • 若葉萌ゆみどりの銀杏黄の銀杏冬に聳ゆる裸木もよし
    福井県小浜市 玉井 令子
  • 伐る伐ると言ひ続けきし槲の樹今新緑の真つ盛りなり
    長野県塩尻市 田中 瑛子

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。