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第30回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

平成28年11月26日に開催しました
第30回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入賞作品を発表します!!

最優秀作品(2首)

  • 細筆で足の爪塗る風呂上り明日から青い夏が始まる
    愛知県北名古屋市 小林 紗矢香
  • 点訳を終え指先よりライオンとかかしときこりが歩き始めた
    静岡県静岡市 高橋 香子

優秀作品(5首)

  • クミンです答えはすでに決めているあなたの好きなスパイスは何
    長野県松本市 高橋 真弓
  • 忘れえぬ友の名前は初音とふ北朝鮮に行きて五十五年過ぐ
    福井県小浜市 田所 芳子
  • 段ボールの中身は僕にもわからないあの春の陽はあるはずだけど
    長野県塩尻市 牧野 令
  • 夏空を見上げて歩く君の手を引くボクは地を泳ぐ心地だ
    岡山県瀬戸内市 小橋 辰矢
  • 黒光るカラシニコフに急かされて歩きし記憶チャーリーポイント
    兵庫県神戸市 瀧澤 秀人

入選作品「自由題」(8首)

  • 雪解けて畝の残りし棚畑を山に還しぬ「猫畑」の名も
    新潟県糸魚川市 堀口 良作
  • 眉を描き自分の顔をとり戻す吐息にくもる手鏡の中
    長崎県諫早市 峰 由美子
  • 冬の陽の淡きに照らされ埋もれいる土器は意外にあやうき薄さ
    長野県塩尻市 中野 カエデ
  • おじいちゃん程の樹が「私と恋してくださらんか」呼びとめてきた
    長野県伊那市 川合 千春
  • 飛び跳ねて笑う遺影に変えたれば息子の命日明るくなりぬ
    岐阜県恵那市 樋田 美和子
  • 猫の子と何して遊ぼ独り居は郵便屋さんが素通りしてく
    長野県塩尻市 浅原 雅子
  • 一冊の無口な本との出会いから私の夢が動き始めた
    群馬県沼田市 桑原 環世
  • 独りとても日に一万語発すべし白いどうだんあかい満天星
    福島県福島市 星 陽子

入選作品「題詠」歩くまたは歩み(7首)

  • 歩むこと痛みに勝つこと雨降りを杖突く同士ほほ笑み交はす
    長野県塩尻市 平林 秀子
  • 子供らの歩み止まればかざしたる吾が手の中の蛍ほのめく
    長野県塩尻市 藤森 円
  • 手をつなぐ左右の双子ちぐはぐに爺を引っ張り踊り歩きす
    長野県松本市 横山 喜三郎
  • 「学校あり」の標識のなか少年と少女はひねもす歩きつづける
    長野県伊那市 鈴木 香代子
  • 同好会の里山ハイクの名称は「歩歩歩歩歩歩(フフフホホホ)」で足取り軽く
    長野県塩尻市 三溝 みい子
  • 波の上歩けさうなる月夜なりイタンキ浜の鳴き砂ならす
    大阪府枚方市 篠原 節子
  • 朝方の空気は秋の香りして芙蓉咲く道歩みを止めた
    静岡県静岡市 野田 有紀

佳作「自由題」(12首)

  • 先(さつき)撮りし集合写真のもう出来てせつかちの世の片隅に笑む
    長野県飯田市 木下 瑜美子
  • 猫嫌いと公言せしが雨の中餌買いに行く米寿の義父は
    愛知県岡崎市 西村 愛美
  • 小さくて赤くてまあるいラディッシュの土落とすときやさしくなれる
    長野県飯田市 田中 純子
  • 我が身より大きい雛に餌はこぶ郭公とは知らず百舌はひたすら
    長野県塩尻市 田中 正志
  • うすやみの庭の草木をなでるやうに迎へ火ゆれて母はきませり
    静岡県静岡市 高橋 香子
  • 魚偏の人かも知れぬ閉まりぎはをするりとかはし乗りてくる人
    千葉県松戸市 谷光 順晏
  • この胸に息を吸い込むうれしさで奇跡のような今日をはじめる
    長野県松本市 宇野 翔子
  • 雪の上をざっくざっくと歩く時音も立てずに夕日が沈む
    長野県塩尻市 藤森 相貴
  • 春くれば鍬も万能の柄も緩み君に頼りて楔打ち込む
    長野県塩尻市 塩原 芳子
  • 「長良橋で日傘が飛んで」フフと笑う寝たきりの媼の初恋のはなし
    岐阜県岐阜市 小島 清子
  • 暴言を妻に吐きたる口でいま教室の子らに夢を語りおり
    山形県酒田市 村上 秀夫
  • 今行けば間に合う君は五時半に仕事を終えて出てくる急げ
    東京都足立区 坂口 大五道

佳作「自由題」(12首)

  • 横たはる馬にすがりし画の中の兵士は歩みはじめただらうか
    北海道旭川市 伊東 ミツ
  • 枝先の尺取虫はその次の歩みを探し宙をさまよふ
    愛知県名古屋市 清水 良郎
  • 歩み板しならせてくる長靴の誰も大股鮪基地なる
    徳島県美波町 下町 昭
  • 歩くとは「少し止まる」と書くのだと同胞の来て仮設の室で
    岩手県大船渡市 村上 美江
  • この先を人は歩いて通れません見えぬ線量高きふるさと
    福島県南相馬市 深町 一夫
  • 馬鈴薯の種を歩幅に並べ行く背なに春陽をひねもすのせて
    青森県六戸町 野崎 和子
  • 被爆者に言葉を交はし歩み寄るオバマは確とその肩を抱く
    長野県塩尻市 小野 宗昭
  • 阿能川岳(あのうがわ)の雪消(ゆきげ)の藪をかき分けて歩み遅遅たり山頂遥か
    長野県池田町 磯谷 留美子
  • 畝と畝せまきあひだを脚ひらき蟹歩きにて藷苗うゑる
    新潟県新発田市 泉 弘子
  • 子どもらはお昼寝中で知らないが歩みの速いかたつむりだよ
    長野県塩尻市 熊井 節子
  • 胎内をころげ落ちたる山羊の仔がよろと起ちたり半歩を歩む
    長野県岡谷市 尾沢 昭子
  • 名人戦目の当りにして緊迫す挑戦者差す歩の一手より
    長野県松本市 小林 幸三郎

奨励賞「自由題」(21首)

  • 車中泊した日の朝の駐車場に見知らぬ人らとあいさつ交わす
    熊本県熊本市 佐藤 寿子
  • 露天湯に塩尻の灯を眺望すここ崖の湯を喜志子愛でにき
    神奈川県相模原市 歌代 宇多利
  • 抱き締めてやれず扉のように立つオレの背中を夜風が叩(たた)く
    岡山県瀬戸内市 小橋 辰矢
  • 土産にと買いし地酒も空の宿この人とまだ連れ合っています
    愛知県新城市 伊田 あや子
  • つづくとは何だかたのしくるくるくる林檎の皮を剥いてゆくとき
    岡山県美作市 田村 敬子
  • 鳥の巣のやうな交番いつも留守つばめもゐない駅前広場
    神奈川県藤沢市 由田 欣一
  • 理由なき寂しさならば癒せるか眩しい若葉ぎゅっと絞れば
    三重県津市 田中 亜紀子
  • 横に寝て仰向けに寝てまた横に子らは布団で変形をする
    三重県名張市 相川 高宏
  • 守り来し家族ありけむ山峡の古りたる家の雨戸閉ざせり
    福島県福島市 黒澤 聖子
  • 江戸前の海に魚のくしゃみ聞く今日で三日目春の雨ふる
    東京都中野区 武藤 昭彦
  • 信濃には虫旨く喰う文化あり蚕(さなぎ)・ざざ虫・いなご・蜂の子
    長野県安曇野市 高橋 渡
  • かんじきに一山の雪踏みしめて林檎の剪定はじむる朝
    青森県十和田市 中里 茉莉子
  • 柿材の妣の箪笥に半襟の刺繍の花が褪せずにをりぬ
    岩手県一関市 千葉 久子
  • 雪解けて土に触れたる指先より春のよろこびかけ上がりくる
    長野県塩尻市 長尾 節子
  • 世の重き荷を早や背負うがに見えて一年生の大きランドセル
    愛知県一宮市 大野 晶子
  • 野馬追の神旗の光り見上げおり避難解除と決まりし空に
    福島県南相馬市 深町 一夫
  • 乘換の反對ホームへ急ぐ間に雪匂はせて人擦れ違ふ
    広島県福山市 池口 司
  • 弓道の足袋を真白に洗ひ干す鶯がすぐ近くに鳴けり
    長野県坂城町 水木 千草
  • 「うどんでも食いに行くか」と夫が云う私の誘いは断るくせに
    岐阜県飛騨市 小林 茂子
  • ほつほつと薯の新芽の出揃ひて朝の点呼を取りたくなりぬ
    富山県氷見市 高瀬 利枝
  • 北辺のスコトン岬は三時半すでに朝焼け樺太照らす
    岡山県津山市 矢野 康史

奨励賞「題詠」歩くまたは歩み(21首)

  • 手作りのベレー帽友より贈られて鏡の前を歩むは楽しき
    長野県麻績村 臼井 靖子
  • 肋骨を三本切って歩む朝足が地に着く地が答えくる
    神奈川県茅ヶ崎市 奥原 ユリコ
  • 餅背負ひひとあし歩みしりもちの双子の一歳祝ふ六人
    長野県長野市 宇都宮 英子
  • 少しだけ小股で歩く住居跡縄文人の歩幅にあわせて
    長野県塩尻市 牧野 令
  • 手を引きて歩みし吾子のブライダル眉目すがしく育ちけるかな
    長野県塩尻市 遠藤 佳子
  • 足裏のこの冷たさは昨夜(きぞ)ひとり銀河を歩いて来たせいだろう
    千葉県白井市 秋山 扶佐子
  • 杖も歩く四歩(よんぽ)にひとつ音たてて近くて遠い赤いポストへ
    新潟県糸魚川市 大竹 マサヱ
  • 素直にて協調性あり難点は忘れ物多しと記さる「歩み」
    東京都葛飾区 上原 厚美
  • 喜蔵爺軒下を杖に歩むとも挙手の礼などしてはつまづく
    茨城県古河市 高橋 こう
  • 「歩調をとれ!」などと号令かかる日のくるやもしれぬこのままゆけば
    新潟県新発田市 伊東 敦
  • 母校にて児童に語る飛行士は宇宙の基地を歩みし人なり
    兵庫県相生市 後藤 政基
  • 病床にて地図たどりたる指先は歩いておりぬ蒼天の下
    栃木県小山市 田崎 正紀
  • パパとママの手のぶらんこに揺れながら児の歩みくる声きらきらと
    鳥取県境港市 佐々木 千代子
  • 歩くとは尊いことよ杖二本突きてゆっくり道渡る人
    青森県弘前市 船水 葉子
  • 「いってきます」見送る背中は大きくなりて振り向きもせず歩き続ける
    長野県塩尻市 藤澤 まゆ
  • きみのあと歩くペースに愚痴を言うだけども向かうゴールは同じ
    長野県塩尻市 小林 洋子
  • ここからは黄のチューリップ向うまでずーと黄色歩いてみやう
    宮城県石巻市 大和 昭彦
  • 通勤の忙しさもあと一ヶ月少しゆっくり歩いてみるか
    宮城県仙台市 角田 正雄
  • 七十年漁師ひと筋歩み来て船は津波に流されもどらず
    岩手県大船渡市 斎藤 陽子
  • 母子手帳に「初めて歩く」と記しあり新米ママのわが走り書き
    熊本県熊本市 佐藤 寿子
  • 二十年かよひなれたる十字橋ときに鴉も歩いて通る
    岡山県吉備中央町 河田 朝子

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。