第31回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品
平成29年9月23日に開催しました
第31回全国短歌フォーラムin塩尻 一般の部 入賞作品を発表します!!
全国から2,671首のご投稿がありました。誠にありがとうございました。
最優秀作品(1首)
- 窓際でヘルマン・ヘッセ読んでいる春のクラゲのような新顔
埼玉県和光市 岩﨑 雄大
優秀作品(5首)
- 「どこでもいい、遠くへ行きたい」わたしまだ女子高生の言葉を使う
千葉県松戸市 湯田 響弓 - 極東一の基地になるとふ岩国がどうかイワクニになりませんやう
山口県岩国市 木村 桂子 - 時としてお爺ちゃんよりお爺ちゃんみたいな顔す二歳の息子
東京都中野区 樋口 盛一 - 横顔は寂しいものだ教科書の子規のほっぺに渦巻きを描く
京都府長岡京市 鳥本 純平 - いやなことあったと顔に書いてある孫を連れ出し電車見に行く
長野県塩尻市 水野 強
入選作品「自由題」(20首)
- 一番線発車の合図「バラが咲いた」セーラー服がひらり降り立つ
長野県茅野市 鈴木 恵美子 - 大安に縫い付けられた背番号サイレンを待つ三年の夏
長野県塩尻市 小松 学 - 春が来たふすまも障子も風を吸うわたしも一緒 よろこびを吸う
長野県富士見町 原 桂子 - 何故だろう三年で建つ国立競技場(きょうぎじょう)六年経っても仮設住宅
長野県安曇野市 髙橋 雅子 - 呼吸する。文字が、言葉が息をする。ペンの先より、こぼれ生まれて
静岡県静岡市 野田 有紀 - 夕の径共に歩める犬と人 犬は犬見て人は人見る
静岡県静岡市 友井 七実子 - 線量は戦場という語にも似てガラスバッジを子も付け走る
福島県南相馬市 深町 一夫 - 鬯(ちょう)と彡(さん)缶(ほとぎ)など寄す鬱の文字ほどけば何とたのしきあそび
長野県塩尻市 丸山 せつ子 - みこもかる信濃へつづく棒道の馬頭観音を春風が撫ず
山梨県北杜市山口 明美 - 朝顔は拳のように固まってただ長月の雨に打たれる
長野県塩尻市 藤森 相貴 - うすぎぬのレースをゆつくり編むやうな心療内科の春の日の午後
青森県八戸市 木立 徹 - 予選にて敗退せしと帰りし子食はず着替へず爆睡をする
長野県坂城町 水木 千草 - 赤茶けて破れさうなる母子手帳わたしの知らぬわたしの原点
神奈川県横浜市 江原 幹子 - 地蜂の巣店に並べば男客群れて信濃の秋は深まる
長野県塩尻市 福井 妙子 - 君のことちゃんと前から好きだから変な前髪しなくていいよ
長野県松本市 髙橋 真弓 - 人が火を火が人を追ふ大野焼き里はひねもす霞のなかに
長崎県東彼杵町 林 直孝 - 朝床で「あら死んでる」といふやうな妻の驚く死にざまが良し
東京都江戸川区 仁戸 久孝 - ペット店出入り口にてシッポ振る値札ゆらして遊ぶ子犬(いぬ)あり
茨城県鹿嶋市 栗崎 國一郎 - にぎる手を開いた中にダンゴムシ小さい方があばれんぼうだ
長野県塩尻市 小沢 敬也 - いつの日か来るのだろうかバラ見てもあなたを思い出さない時が
東京都足立区 坂口 大五道
入選作品「題詠」顔(20首)
- 夕暮れのテニスコートで黙々とくぼみをならす君の横顔
長野県伊那市 羊子 - 新しき車は顔が厳つくて社長に似るも乗り心地よし
神奈川県平塚市 小平 貞 - 積む石に頭と顔の在るを言ひ父は梃子もて微調整する
福岡県大牟田市 西山 博幸 - 百姓は顔も売る時代(とき)うめ・りんご・米・干柿と伊那谷の四季
長野県伊那市 下井 貞子 - 今どんな顔してますか帰り道のたそがれ時に言うのはずるい
長野県塩尻市 熊井 友里 - この面をつくるに八十路かかりしか直しのきかぬ顔のひげ剃る
長野県塩尻市 小野 宗昭 - 針箱は女の顔と愛しみて掃除いとはぬ母の懐かし
東京都品川区 榎本 美津子 - 盂蘭盆会いち族の額の末に並む水兵服の叔父の顔の絵
新潟県新潟市 塩沢 笑子 - 群青の大水槽に漂える顔無き海月に人は癒さる
奈良県奈良市 島本 太香子 - 空穂には万を越す歌人業績と世事的な記者両顔があり
長野県塩尻市 郡上 典雄 - 新幹線二泊のリュック行き先は西瓜持て待つ丸顔の母
東京都練馬区 笠間 紫苑 - 灯の下に人は孤独な顔をして我が家に向かうバスを待ちおり
山梨県南アルプス市 宮坂 園子 - 背が高く顔面偏差値57スーツの似合う人募集中
長野県岡谷市 澤 映子 - ほとぼりが冷めたあたりに顔を出す土竜みたいな悔いがあります
長野野沢温泉村 片塩 宏朗 - 顔が立つ顔を利かせる顔を貸す我が物顔のしたり顔ああ
長野県松本市 宮阪 洋子 - 十歳のブーツは十歳の顔をして玄関隅に笑まう如あり
愛知県小牧市 水野 香代子 - 半々ね父の里でそう言われ母の里でも我の顔見て
三重県四日市市 宮川 潤 - 立つ位置で笑顔に見ゆる処ありと山のガイドは巨岩を指差す
長野県伊那市 後藤 郁 - 亡き父の2×3の顔写真キンゲン実直一徹ムヨク
千葉県佐倉市 藤井 正子 - 手を繋ぎ手のひらにできるゆるい皺笑った顔に多分似ている
神奈川県横浜市 小野 佳織
奨励賞「自由題」(20首)
- ひげ面のおとこが鏡に向かってる寝ぐせ直しの時間が足りない
長野県岡谷市 澤 映子 - 囚はれし介護施設の母の元はつらつと行く恍惚の父
埼玉県久喜市 齋藤 博繁 - つんのめるやうな辞儀してくる幼麦藁帽子がころがり落ちる
茨城県笠間市 飯田 初江 - あららぎを山より採り来て茎噛めば母のつくりし味噌の恋しき
新潟県新潟市 塩沢 笑子 - 葉を打ちこむ創意聞きつつ「月桃(げっとう)蕎麦」の色・香も初に味ふ沖縄
千葉県松戸市 山下 利子 - 雪ざらしの小千谷ちぢみをかけやれば柩の母に青葉かげさす
大阪府枚方市 篠原 節子 - フィリピンの海底に呼ぶ兄の声運びて鳴るか水戸の潮鳴り
栃木県宇都宮市 中山 多佳 - 退院せし夫のカップに久しぶり牛乳を注ぐ朝の清しき
長野県諏訪市 岩本 幸穂 - 久びさに息子と会へばかみ合はず敬語まじりの話をしたり
埼玉県鶴ヶ島市 南雲 ミサオ - はればれと水田ひろがる安曇野に雪嶺ひきゐて有明山(ありあけ)の立つ
長野県安曇野市 原田 幸子 - 夏草の匂ひ満ちたる雨上がり鼻先上げて猫も庭ゆく
静岡県浜松市 河田 琴栄 - カップ焼そばだけの夕食夜が明ければ三十回目の父の命日
京都府京都市 田中 典子 - 重き空を傘で「えいっ」とおしあげて我の居場所を保ちて歩む
山口県下関市 山本 須美子 - 戸隠のなだりに光る白き花そば打ち講座募集はじまる
神奈川県川崎市 大和 嘉章 - 備えにとヨウ素錠剤子どもらに配る大人の住んでいる星
福井県坂井市 藤田 久子 - 朝すでに夫の背中がはしゃぎをり今夜息子と飲みに行くらし
愛知県岡崎市 西村 愛美 - あなたは右わたしは左へ歩き出す一日を共に過ごしてゆふべ
長野県佐久市 内藤 洋子 - 優しさと思いやりとは別物だなんてどちらもない人が言う
埼玉県和光市 岩崎 雄大 - 単身で都会へ赴任のキャリアの妻はおそらくはもう帰郷はすまい
香川県宇多津町 松繁 美吉 - うしろ指さされる恋をしてみたしひと駅先の町に降りたつ
東京都小金井市 中村 哲
奨励賞「題詠」顔(23首)
- 朝一番おはようございます子どもたち声から伝わる子どもの笑顔
長野県塩尻市 宮﨑 大地 - いつまでも起さないでねあおむけにおだやかな顔妻の死顔
静岡県下田市 後藤 瑞義 - 収穫の桃の実たちに顔のあり千取れば千万取れば万
長野県豊岡村 毛涯 潤 - かつら脱ぎ貴族のくびきを脱したるベートーベンの人間の顔
東京都中野区 武藤 昭彦 - ほうれい線どうのかうのは置いとかう顔は大事な私の歴史
長野県塩尻市 松澤 美和 - 朝顔も昼顔もあり夕顔も加へてヒトに夜の顔あり
長野県千曲市 石黒 信幸 - 別嬪じやないが見飽きぬ妻の顔六十年をともに牛飼ふ
大分県竹田市 後藤 清人 - 笑う夫花に埋もれて逝きし夫二つの顔を吾忘れまじ
岐阜県岐南町 鈴木 和美 - 我を通すことを諦めクッションに顔をうずめて夜中に叫ぶ
愛知県豊橋市 森田 知恵子 - 神経質さうな啄木の細面声はおそらく甲高からむ
福岡県北九州市 中村 重義 - 顔認証できさえすればいい写真可愛く見られようとする数多
東京都町田市 平井 かよ子 - 銭湯に馴染みとなりぬ顔と顔湯船につかれば名前わからず
東京都杉並区 青木 房枝 - ポケットは栗や零余子にふくらんで栗鼠の顔して山を下りぬ
三重県多気町 髙山 幸子 - 祭りの日白粉ぬったうれしさを重ね塗りゆく少女らの顔
長野県高森町 寺沢 照子 - 呆れ顔もう帰るよと言いながら夕暮れの中で四つ葉探した
千葉県松戸市 湯田 響弓 - 夏風の笑顔振りまき登校す終業式を迎ふる子らは
長野県塩尻市 藤森 円 - 映像の魚をつかむまねをする夫の仲の少年の顔
静岡県静岡市 西貝 里美 - お札には故人の顔が刷ってあり生者はそれで売り買いをする
三重県名張市 相川 高宏 - しかられて涙を覆ったその顔の開いた指の小さなすきま
三重県四日市市 中山 秀子 - 大学の入学記念のせんべいに益川さんの笑顔が並ぶ
愛知県名古屋市 江崎 ヤヨヒ - 吾の顔をしっかり写しているだろうATMに背すじを伸ばす
山梨県北杜市 山口 明美 - 子等とゆく三保の松原の遊歩道羽衣松に昼顔の咲く
三重県松阪市 近藤 美さを - だいじょうぶ明るく嘘をつく母は横顔のままシーツをたぐる
鳥取県琴浦町 中本 久美子
※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
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