» 第33回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

第33回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

令和元年9月21日に開催しました
第33回全国短歌フォーラムin塩尻(一般の部)入賞作品を発表します!!
全国から2,543首のご投稿がありました。誠にありがとうございました。

最優秀作品(1首)

  • 湖に人住む島のあるという近江のくにの大きそのうみ
    長野県松本市 守屋 久見子

優秀作品(5首)

  • こうもりがかぼちゃの煮つけ買いこんで通り抜けてくハロウィンの街
    長野県塩尻市 中山 由美子
  • 「あいたい」と打って消してを繰り返し予測変換だけに伝わる
    長野県上田市 日向 彼方
  • あと二分次の電車が来るまでに電話が鳴ったら引き返すから
    東京都足立区 坂口 大五道
  • 駅の字に馬いる不思議を問う子いて馬継ぐ昔の旅語りやる
    長野県塩尻市 水野 強
  • ただ一人の担任の子を引率し無人駅より受験に向かふ
    北海道札幌市 藤林 正則

入選作品 自由題(20首)

  • この匂い知ってる春が来る時の自転車を漕ぐ速さの匂い
    長野県松本市 堀内 悠子
  • 草の波にたゆたふ紋白蝶(もんしろ) 蝶の時間われの時間の過ぎてゆくなり
    長野県筑北村 宮下 喜美子
  • 自転車に乗りつつ水を飲む人に昨日も会った駅前通り
    長野県塩尻市 藤森 相貴
  • 風呂の火に手をかざす孫とおしゃべりし薪を焚くのもいいなと思う
    長野県高森町 井澤 幸子
  • 農道を男(を)の子三人(みたり)が自転車で蛙の声を真似して帰る
    島根県松江市 大野 明美
  • 母となりし子のランドセル棄てたればやうやく我は子離れしたり
    長野県塩尻市 赤津 光晴
  • キタキツネ痩せて一匹沼地ゆく晴れもさみしき野付半島
    岐阜県岐阜市 後藤 進
  • 晩年の母の小さき背を思い地震(ない)でこわれた墓洗いおり
    東京都西東京市 佐々木 節子
  • ドギマギし結婚させてと彼が言う隣で娘は超(ちょう)嬉しそう
    長野県塩尻市 熊井 芳彦
  • あちこちに倒れし名札を立て直しわが家の庭の春が始まる
    長野県塩尻市 上石 みえ子
  • よくどもる私が今日は滑らかにしゃべっているから夢だとわかる
    山口県光市 松本 進
  • この径は歩きたくて歩く径母の好みし空木咲く径
    長野県松本市 中野 寛人
  • 重力が僕の疲れにぶら下がり静かな闇へと落ちていく夜
    長野県塩尻市 瀧澤 ひとみ
  • 一見は料理しやすき夫なれど頑固なあたりが多分生煮え
    千葉県白井市 毘舍利 愛子
  • 方向音痴のわたしが黄泉に着いたならあなた必ず迎えに来てね
    長野県松代町 麦島 照子
  • 何時からか話せば長くなるのでと誤解とかざる男となりぬ
    長野県松本市 宮田 透
  • 大縄を飛んで向こうへ抜ける様な覚悟で生死越えて行けるか
    三重県津市 田中 亜紀子
  • 今日も又九十五歳が歳忘れ十二鞐の地下足袋を履く
    熊本県水俣市 中村 和博
  • シロップは何味が好き?雪山に夕日がかける杏シロップ
    長野県塩尻市 石井 麻美
  • クワガタが庭にいたからこのうちに生まれてよかったきみが言う午後
    長野県松本市 平藤 布由

入選作品 題詠「駅」(20首)

  • 父さんは駅へ迎へに行きたがる二十歳のわたしや死んだ家族を
    香川県多度津町 藪内 眞由美
  • 行き先はSuica(スイカ)使えない無人駅降りて覚えた彼のふるさと
    長野県塩尻市 樋口 奈津子
  • 駅裏のどぶ板小路の棟割りの奥から二軒目 居酒屋「おゆき」
    長野県伊那市 伊東 勝茂
  • 高校の春の駅伝二時間半ふるさと伊那路がテレビに映える
    長野県塩尻市 川上 みよ子
  • 改修のたびに広がる地下空間渋谷の駅の祈りは深い
    東京都渋谷区 仲村 一郎
  • ふるさとの佐渡に線路も駅もなく「蛍のひかり」港に流る
    新潟県上越市 江見 成代
  • 遠ざかるテールランプが揺らめいて松本駅の一つの吐息
    長野県松本市 佐藤 翔斗
  • 改札鋏カチリと鳴ってふるさとがゆけと告げたる三月の駅
    静岡県浜松市 河田 琴栄
  • 無人駅の夜陰に埴輪はすくと立ち降り来る客をまた驚かす
    鳥取県米子市 生田 麻也子
  • 始発兼終着駅の門司港に征きし軍馬の水飲み場あり
    福岡県北九州市 中村 重義
  • 人混みに逸れぬように手を繋ぐ 東京駅はちょっとうれしい
    長野県泰阜村 松島 房子
  • この駅に来るたび思う一生を駅間の時間と詠みし歌人を
    長野県佐久市 臼田 宇多子
  • 乗りすごし降り立つ駅のはだか電球きのうはごめんむかへに来てよ
    長野県上松町 原 きよ子
  • 今はもう廃駅なれど駅前と言ひて落ち合ふ同窓生と
    大阪府堺市 梶田 有紀子
  • 行商の魚を背負ひゆつくりと駅の階段母は登りき
    青森県八戸市 遠瀬 信子
  • ただひとり吾を乗せるため停車せしすすきの中の小さなる駅
    長野県佐久市 中沢 富士子
  • 改札じゃなくてホームで手を振ってくれた祖父母の手にある切符
    大阪府堺市 一條 智美
  • 自動では開かないドアのボタン押しはじめて降りた君のふるさと
    愛知県名古屋市 神山 倶生
  • ガス栓は閉めたかしらと桜散る駅のホームに又もつぶやく
    大阪府豊中市 杉野 裕子
  • 「店主疲弊 休業」の紙駅前のシャッターに見て職場へむかう
    大阪府池田市 貝原 亮

奨励賞 自由題(23首)

  • 炎帝を山車に伴なひ巡行す炭鉱(やま)の祭りの残る故郷
    福岡県大牟田市 鹿子生 憲二
  • 天竜を炬燵舟にて下りたり近寄りて来るあひるの親子
    長野県飯田市 中田 紀子
  • 校庭に木蓮の蕾ふくらんで我は退職、出発の春
    長野県松川村 渡島 正次
  • 餌を食べ 気ままに過ごし 糞をする 我が愛犬と 重なる自分
    長野県塩尻市 成田 静也
  • あみだくじを逆さに辿りゆくようにビルの足場は組まれゆきおり
    長野県長野市 小山 美由紀
  • 十歳の今日は今しかないという大人びた顔母の日刻む
    長野県塩尻市 若林 鮎美
  • 並木道ヒマラヤスギの枝は揺れざわんざわんと夏風の立つ
    長野県松本市 清原 由紀子
  • 若き日の意気あらわなる日記帳 ひもときおれば掌に汗にじむ
    長野県松本市 永田 統一郎
  • 何一つ叶わなかった青春をこねて作った三色団子
    長野県松本市 佐藤 翔斗
  • 花冷えの風に吹かれてウォーキング貼り絵のような三日月浮かぶ
    長野県塩尻市 清水 美津
  • これからの十年先を娘に言へばやんはり施設の話などする
    茨城県鹿嶋市 大熊 佳世子
  • 鉄球が浅間山荘の壁を打つカップヌードル皆して食べた
    大分県竹田市 佐藤 政俊
  • 日曜の引越し車にいつぴきの紅い金魚も運ばれて行く
    東京都新宿区 大西 丈夫
  • 畑中に風をいつぱい吸ひこみて腹わたのなき鯉のおよげり
    群馬県高崎市 井田 徳子
  • 正面の慈悲の顔より裏で笑む暴悪大笑のせつなさが好き
    愛知県刈谷市 鈴木 鋭二
  • わが頬を春の空気にふくらませ泡を剃りゆく剃刀の幅
    愛知県名古屋市 清水 良郎
  • 虹見つけ何かいいことあるかもとそのワクワクがすでに、いいこと
    北海道札幌市 笹崎 未歩
  • 万葉集を学びし昭和十五年 岩波文庫の定価八十錢
    長野県塩尻市 川上 みよ子
  • 広げ干す毛布二枚をやつつけるやうに竿ごと倒す強風
    岐阜県関市 伊佐地 博子
  • 雷鳥は待ち人のごとく駒津峰(こまつみね)に老い人われの道案内(あない)する
    長野県塩尻市 小野 美佐子
  • 蒼天の北アルプスの峰々に雪形みえて田に動く人
    静岡県藤枝市 伊藤 待子
  • マジシャンが花咲かすごと予報士は長野の上に太陽を置く
    長野県長野市 せき たつお
  • 「おまえはそれでも母親か」と先生は山羊の横っ面を張った
    神奈川県川崎市 岡村 還

奨励賞 題詠「駅」(23首)

  • 学生のわが子のみやげは下車駅の釜飯二つ 上雪の降る
    長野県塩尻市 濱 洋子
  • 半袖の君を知らずに消えた恋もう空は秋 通勤の駅
    東京都中野区 丹羽 敏彦
  • 右・左・斜めに歩き立ち止まりまっすぐ歩けぬ新宿の駅
    長野県塩尻市 茂木 由美
  • 種を蒔くやうに各駅停車して春へ春へと列車が走る
    青森県八戸市 木立 徹
  • いくつかの駅の名前を読み継ぎて娘を忘れた母に会う旅
    茨城県土浦市 佐藤 由美子
  • 新宿駅で人と言葉がすれ違う糸がするするほどけるように
    長野県塩尻市 芦澤 拓也
  • 「駅ね」って送って電池切れました あとのすべてを君にゆだねる
    長野県上田市 日向 彼方
  • 山あいの道の駅なる和田宿に朝採り買わんたらの芽わらび
    長野県下諏訪町 髙木 和子
  • 深夜発のバス待つ駅のふくれゆく大きリュックをどさりと降ろし
    京都府城陽市 近藤 好廣
  • 電車待つ間に雪がチラチラと降り出すことも昔と変わらず
    長野県松本市 堀内 悠子
  • 終着の電車が始発となりて行く駅に一叢やまぶきが咲く
    群馬県みなかみ町 真庭 義夫
  • 畦道のやうなホームにすみれ咲く茂吉記念館前といふ駅
    埼玉県川越市 荒川 惠子
  • 東京までは従いて行けない 乗り換への駅に降ろしたあの時の恋
    長野県飯田市 木内 かず子
  • 杜氏終へ帰る兄待つ春の駅行李に酒の匂ひ微かに
    長野県塩尻市 宮坂 栄
  • 車椅子の渡し板もち駅員が地下鉄降車口へと走る
    大阪府豊中市 小島 督子
  • 最終の下りが去った穂高駅にわかに響く鈴虫の声
    神奈川県横須賀市 小林 一徳
  • 四月から乗り合ふ少女この朝も駅の階段トントンと行く
    宮城県石巻市 大和 昭彦
  • つばめのふん古き駅舎の真中にありて人らは迂回しては行く
    兵庫県香美町 嶋田 冨美代
  • 酔い潰れ終点ですよと起こされし常滑はいま通過駅なり
    愛知県大府市 清水 みや子
  • 夕闇に亡き子も入りし踊りの輪郡上八幡駅に降り立つ
    長野県塩尻市 古畑 富美江
  • 人混みの駅のホームに鳩は鳩のペースくづさず空間つくる
    長野県飯田市 木下 瑜美子
  • 特急を遅らせしこと兄語る駅弁の釣りに手間取りしとぞ
    千葉県大網白里市 是松 たまき
  • 門司駅(もーぢきー)、小倉駅(ここらー)、八幡駅(やがてー)、黒崎駅(このさきー)、折尾駅(おりよー) 博多はまだまだとほい
    福岡県宗像市 中村 仁彦

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。