第34回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品
第34回全国短歌フォーラムin塩尻(一般の部)入賞作品を発表します!!
全国から2,456首のご投稿がありました。誠にありがとうございました。
- 最優秀作品(佐佐木幸綱 選)
- 最優秀作品(永田和宏 選)
- 最優秀作品(小島ゆかり 選)
- 優秀作品(佐佐木幸綱 選)
- 優秀作品(永田和宏 選)
- 優秀作品(小島ゆかり 選)
- 入選(佐佐木幸綱 選)
- 入選(永田和宏 選)
- 入選(小島ゆかり 選)
- 奨励賞(佐佐木幸綱 選)
- 奨励賞(永田和宏 選)
- 奨励賞(小島ゆかり 選)
最優秀作品(佐佐木幸綱 選)
- ゆったりと泳ぎひらりと旋回すエイをイメージ面接試験
富山県富山市 松田 梨子
▲評 入社試験の面接に際しての心構えは「ゆったり」と「ひらり」。エイを手本にする意外性と斬新さ。
最優秀作品(永田和宏 選)
- きみの手がなぞる瞬間灯り出すわが身体(からだ)の正しい輪郭
山梨県都留市 山本 栞
▲評 濃密な愛の場面か、さりげなく頬を手が触れていく瞬間か。触れられ、なぞられることによって、自らの「身体の正しい輪郭」が強く意識されるのだ。
最優秀作品(小島ゆかり 選)
- 数百の人生横切る踏切に震える齢二十歳のわたし
岐阜県岐阜市 河西 万有
▲評 通過してゆく列車に見える一人一人に人生がある。そう思った瞬間の怖れを、若々しく表現した。踏切で待つ体の震動と、そして心の震え。
優秀作品(佐佐木幸綱 選)
- 山が似てる空気が似てる風が似てる一人暮らしの町とふるさと
長野県松本市 松田 わこ
▲評 一人暮らしをはじめるときの心の地盤は山と空気と風。ふるさとを愛する作者の門出の歌です。 - 「雲」の役もらいし子には台詞無く「花咲き山」の舞台をよぎる
愛知県新城市 伊田 あや子
▲評 学芸会で「花咲き山」の「雲」の役を当てられた子。セリフはなくても役を演じきる一生懸命さを表現。 - 雲海を歩む心地で結婚の約束をした夜道を帰る
北海道札幌市 住吉 和歌子
▲評 婚約をした帰り道。「雲海を歩む心地」という、昨日までとはちがう自分を実感しているのです。
優秀作品(永田和宏 選)
- 山が似てる空気が似てる風が似てる一人暮らしの町とふるさと
長野県松本市 松田 わこ
▲評 ふる里を離れての一人暮らし。何を見てもふる里を思い出してしまう。上三句のリフレインがよく効いている。 - この胸と同じ重さで霧のなか夫(つま)を恋ひしか雲居の雁は
山梨県都留市 山本 栞
▲評 題詠に「雲居の雁」を採ったのはおもしろかった。「霧のなか」は当然、雲居の雁の相手、夕霧を意識に置いているのだろう。切ない思い。 - 雲行きのあやしくなりゆく三歳児一人で泊まる初めての夜
愛知県名古屋市 江崎 ヤヨヒ
▲評 初めてのお泊り。祖父母の家ではしゃいでいた筈が、寝る時刻に近くなるとだんだん「雲行きがあやしく」。よくある光景をうまくとらえた。
優秀作品(小島ゆかり 選)
- 仕切り越しに杖つく母の手を眺む二十二歳が終戦と言ふ
大分県大分市 長畑 孝典
▲評 老人ホームの面会の場面だろう。ウイルス感染防止対策の透明の仕切り越しだからこそ、その手に目が行った。一首に母のドラマがある。 - マスクはずし空に向かいて深呼吸空気のおかわり雲まで飲みこむ
岐阜県飛騨市 神出 典子
▲評 マスクが日常のものとなった今年、深呼吸の健やかさを思う。「空気のおかわり雲まで飲みこむ」という、大らかで豊かな表現がすばらしい。 - あぶら蝉入道雲と痒い腕これより今年の夏となります
長野県塩尻市 藤森 深生
▲評 あぶら蝉と入道雲と、もう一つ「痒い腕」と体の実感を言ったところが、とてもいい。読者に語りかけるような表現も魅力がある。
入選作品(佐佐木幸綱 選)
- ひとつとておんなじ雲はないものと心を決めた進路相談
埼玉県鴻巣市 新井 聡子
▲評 作者は進路相談をする高校の教員でしょうか。生徒たちの多彩な将来、多様な個性をあらためて確認している歌と読みます。 - はじめてのテイクアウトにテンションがあがる70代のふたりは
山口県岩国市 西村 博子
▲評 新型コロナウイルスの影響で、はじめて経験するテイクアウト。仲のいい夫婦像が浮かび上がってくる一首です。 - 納骨もすべて終はりぬ言葉でしかわたしは父にもう触れない
香川県多度津町 藪内 眞由美
▲評 父には「言葉でしか・・・もう触れない」が、簡潔かつ含蓄の深い表現として心に残ります。 - くり返し力いっぱい背伸びして地球になじむ新生児等は
愛知県岡崎市 西村 愛美
▲評 「地球になじむ」という表現が斬新です。多くの新生児たちが手足を自在に動かしている情景が目に浮かびます。 - 上手くいくはずなんてない告白を嘲笑うかのような晴天
長野県松本市 佐藤 翔斗
▲評 思い決めた人に愛を告白しにゆく途中の気持ちでしょう。若さならではの希望と絶望の間を大きく揺れる心が読める一種です。 - ボランティアの人らへ渡す弁当にぬくき雲呑スープを添える
栃木県佐野市 田所 妙子
▲評 せめてもの感謝の思いの表現ですね。「ぬくき雲呑スープを添える」が具体的かつイメージが鮮明で注目しました。 - フクギ並木抜ければ備瀬の朝なぎの海面に映るにびいろの雲
沖縄県沖縄市 与儀 典子
▲評 観光地として有名な備瀬のフクギ並木に、朝凪の海とにびいろの雲を配して、動画風に映像を仕立てたアイデアに注目。 - 雲海の広がる嶺で大ジャンプ2000メートル八方ケルン
東京都国分寺市 杉原 真実
▲評 雲海の広がる八方尾根スキー場での大ジャンプです。名詞を多く用いて、ドキュメンタリーの雰囲気を出しています。 - 灰色の雲垂れ籠める休日は黄色のバラを窓際に置く
長野県松本市 田中 夏楓
▲評 大きな景色から一挙にズームインして、窓際の黄バラをクローズアップしたドラマティックな構成が印象的です。 - あの夏の海岸沿いの民宿のぬるいビールとひとひらの雲丹
長野県塩尻市 牧野 令
▲評 なぜか忘れられない昔の旅の一コマです。「ぬるいビール」「ひとひらの雲丹」が「なぜ?」という思いを増幅させます。
入選作品(永田和宏 選)
- 同等にと生きてきたけど同質じゃないとわかった男とおんな
長野県安曇野市 髙橋 雅子
▲評 同等ではあるけれど、同質ではない。こんな基本的な認識がジェンダーやLGBTなどを考える際には大切だ。同じではないが、同じように尊重されるべき。 - 富士よりも上から富士を眺むるを古人は思はざりけむ
鳥取県八頭町 角田 文洋
▲評 富士に登った人も少なかっただろうけれど、昔の人に富士を上から眺める発想などはきっとなかった筈と、作者は飛行機から見ているのだろうか。 - 納骨もすべて終はりぬ言葉でしかわたしは父にもう触れない
香川県多度津町 藪内 眞由美
▲評 納骨を済ませ、父の手触りをすべて無くしてしまったいま、父は私の言葉のなかにしか生きていないと実感する。言葉で触れつづけることが大切。 - 刺網に銀鱗まとう大鰊ゴムのカッパのヤン衆の番屋
北海道紋別市 南 みのり
▲評 ダイナミックな躍動感が語感にうまく表現されている。実際に見ているのか、写真か映像なのか、いずれにせよそんな景への郷愁がある。 - 胎内で動く生命(いのち)を感じてるそうだ、わたしは哺乳類♀(メス)
長野県松本市 折井 梨絵子
▲評 男には決してわからない感覚なのだろう。そんな内側の生命を感じたとき、改めて「哺乳類♀」を実感する。「おんな」ではなく「♀」というのが秀逸。 - 「雲」の役もらいし子には台詞無く「花咲き山」の舞台をよぎる
愛知県新城市 伊田 あや子
▲評 たとえ雲の役で、台詞が無くても一生懸命舞台で雲を演じるわが子。それは今だけではなく、将来への親の希望でもあろう。 - 新幹線岡山からは伯備線神在月の出雲への旅
大分県豊後大野市 菊地 孝也
▲評 旧暦十月は神無月。出雲では神在月。その出雲への旅だが、固有名詞ばかりの珍しい一首である。旅の風情を楽しんでいる様子が伝わる。 - 曲線をきちんと曲げて引くためのアイロンのやうな雲形定規
東京都東久留米市 関沢 由紀子
▲評 上句の発見がすばらしい。「きちんと曲げて引く」のが曲線だと言われるとなるほどそうだと強く納得。私なども昔はよく使ったものだ。 - 春ぷかり夏湧き上がり秋流れ冬はどんより雲の四季なり
東京都町田市 両角 美貴子
▲評 春夏秋冬の「雲の四季」、そのあり様を、それぞれ一語で表したのがうまい。確かにそんな風に見えてくる。 - 昨日見た雲をちぎって食べる夢最終面接結果待つ日々
富山県富山市 松田 梨子
▲評 最終面接まで行ったのは良かったが、さてその結果はとそわそわ落ち着かない。「昨日見た雲をちぎって食べる」には待つことの浮遊感が。
入選作品(小島ゆかり 選)
- 水蜜桃のごとき頬せる女の孫の耳に補聴器光るはつなつ
青森県十和田市 中里 茉莉子
▲評 やわらかい桃色の頬をした女の子ゆえに、補聴器が痛々しく思われる。事実だけの簡潔な表現に、やさしい慈しみの思いがにじむ。 - 富士よりも上から富士を眺むるを古人は思はざりけむ
鳥取県八頭町 角田 文洋
▲評 神のごとくはるかに仰がれてきた富士山を、上空から見下ろすとは。視点のおもしろさだけでなく、ほのかな批評性も感じられる。 - 左利きの保育士が読む紙しばい怪獣はしっぽから登場す
茨城県鹿嶋市 大熊 佳世子
▲評 多くの物は、右利きの人用に作られている。だから、左利きの保育士さんが紙を繰ると怪獣は頭でなく尻尾から。それを愉しむ心の豊かさ。 - ゆったりと泳ぎひらりと旋回すエイをイメージ面接試験
富山県富山市 松田 梨子
▲評 緊張せずゆったりと、そしてときにひらめきを見せる、というイメージだろうか。面接試験の歌にして、この独創性。魅了される。 - 長くなる夜をわかっているような彼岸の梨のしずかな重み
香川県高松市 岡 桃代
▲評 秋の彼岸の中日が、秋分の日。詩的な捉え方であるのに、実感を伴う。梨を手にのせてみたくなる。季節の歌であり、存在の歌である。 - 「雲」の役もらいし子には台詞無く「花咲き山」の舞台をよぎる
愛知県新城市 伊田 あや子
▲評 「雲」役の子には、台詞はなくとも、「花咲き山」の舞台をよぎるという重要な役割がある。その子をじっと見つめる作者が、見える。 - 卒業のはなむけのことば担任の「時々雲を見上げてください」
大阪府大阪市 大井 市子
▲評 卒業のはなむけに、こんなことを言ってくれる担任の先生にも、それを心にとめて歌にした作者にも、深く感動する。 - 雲を掴むような挑戦した友に議員バッジが輝いている
愛知県知立市 風間 勝治
▲評 明るいリズムに、友への祝意が感じられる。「雲を掴むような」という言葉が、思いがけないユーモアをもたらした。 - 吾の腹にこどもがひとり棲み着いて雲がいろんな形に見える
茨城県ひたちなか市 大和田 ももこ
▲評 上句から下句への大きな飛躍に、斬新な詩の世界が感じられる。まるで、お腹の子の目で雲を見ているような、おもしろさ。 - 雲の漉す初夏の光が降りそそぎちりめん漁はいま最盛期
香川県さぬき市 石塚 惠子
▲評 雲の漉した光そのもののような、きらきらとしたちりめんじゃこが見える。初々しい、初夏の命のかがやきを捉えた秀歌。
奨励賞(佐佐木幸綱 選)
- 捏ねる手も回を重ねるたび毎に滑らかとなる蕎麦打ちの会
宮城県仙台市 角田 正雄 - 銅の鉱山(やま)を支えしトロッコが紅葉狩へと客を乗せ行く
栃木県さくら市 青木 一夫 - 「もう少し遠距離恋愛続けましょ」父の墓前で手を合わす母
兵庫県川西市 木内 美由紀 - 左利きの保育士が読む紙しばい怪獣はしっぽから登場す
茨城県鹿嶋市 大熊 佳世子 - 農を継ぎ土耕せる父なれば蝗・蜂の子愛でて酒汲む
茨城県土浦市 佐藤 由美子 - お地蔵さまも白いマスクをかけておりひなげしの花お供えされて
山梨県北杜市 山口 明美 - 両の手で子の初名刺受け取れば微かな重みとインクの匂ひ
長野県塩尻市 折橋 玲子 - 友だちを紹介するよと猫今日は二十五センチのヘビ連れ帰る
長野県茅野市 鈴木 恵美子 - 数百の人生横切る踏切に震える齢二十歳のわたし
岐阜県岐阜市 河西 万有 - 勢いつつ一人が泣けばまたひとり小児科前には未来がいっぱい
新潟県柏崎市 室住 智子 - 黒姫山(くろひめ)にかかりし雲の動き見てひと日の予定おのずと立ちぬ
新潟県妙高市 髙島 みつえ - 梅雨空の黒雲を裂きオスプレイ悠々と飛ぶ普天間上空
沖縄県糸満市 平良 宗子 - ふるさとの桜島(しま)に逢ひたし病窓の飛行機雲に思ひ乗せゆく
長野県塩尻市 吉江 成子 - 雲海をはるかに望み屋根を葺く鉢伏山に初雪まぢか
長野県安曇野市 平井 満 - 母と父私と兄の影法師わた雲に似て着いては離れ
長野県塩尻市 小松 綾奈 - 浮雲のだんご屋を娘(こ)は晴れ晴れと継ぐと言いけり去年(こぞ)の父の日
東京都練馬区 新美 喜代男 - 雲ひとつない空菜の花花盛りマスク姿の家族の写メール
長野県佐久市 内藤 洋子 - 雲のへりほつれてゆくを見てをりぬさつきからずつとことば探して
長野県筑北村 宮下 喜美子 - 十九歳一人暮らしに慣れてきて入道雲が笑って見えた
長野県松本市 松田 わこ - 木洩れ日に雲切草のひそと咲く葛の葉覆ふ棚田の片隅
長野県長野市 竹内 洋夫
奨励賞(永田和宏 選)
- うぐいすもかえるも皆も元気です帰省叶わぬ子にメールする
愛知県新城市 伊田 あや子 - 玄関の呼び出し音の二度三度急かさないでよ急いでいます
山梨県山梨市 雨宮 つぎ子 - 会いたいな くらいが丁度良いのだろう空を横断伸びる白線
群馬県沼田市 桑原 環世 - 左利きの保育士が読む紙しばい怪獣はしっぽから登場す
茨城県鹿嶋市 大熊 佳世子 - ゆったりと泳ぎひらりと旋回すエイをイメージ面接試験
富山県富山市 松田 梨子 - 少しずつ以前に戻る梅雨の朝なかったことにならぬことあり
群馬県渋川市 木暮 由利子 - もしもまたこの世に生を受けたなら「麦」と言ふ名がいいなと思ふ
長野県諏訪市 林 滋子 - シャボン玉割れてく音が寂しくて君の呼吸とちょっと似ている
長野県塩尻市 瀧澤 ひとみ - 口紅をやや明る目に変えようか君に会えない春だとしても
埼玉県川越市 荒川 惠子 - ああ見えてオオイヌノフグリは外来種 イヌノフグリを駆逐せんとす
愛知県岡崎市 兼松 正直 - さるすべりこぼれる昼を三匹の亀は泳いで夏雲の中
大阪府岬町 岡野 はるみ - 雲海を歩む心地で結婚の約束をした夜道を帰る
北海道札幌市 住吉 和歌子 - 八ヶ岳の峰の八つが競ひつつ入道雲を押し上げにけり
東京都杉並区 庭野 治男 - すり減りしビブラム底に想ひあり雲間の穂高岳(ほたか)いまも厳座す
長野県長野市 小松 良 - 鹿島槍ヶ岳(かしまやり)の双耳の嶺に影おとし綿雲ひとつ六月の空
長野県池田町 酒井 鈴子 - 十九歳一人暮らしに慣れてきて入道雲が笑って見えた
長野県松本市 松田 わこ - 梅雨の夜の月にかかれる薄雲の昏さを生きて昏さが似合ふ
大阪府枚方市 西山 千鶴子 - 来年はリニアの用地に変る田に流れる雲と青空写す
長野県高森町 北林 洋子
奨励賞(小島ゆかり 選)
- 亡き友の句集ひらけばさしあげし栞も深く挟まれてあり
長崎県諫早市 花岡 壽子 - 弥生発幾春別(いくしゅんべつ)行き折り返し幾春別発 線路はつづく
東京都東村山市 さいとう すみこ - 九十五歳の春は一入芽吹く木の朝露ひかるいのちいとおし
静岡県小山町 大矢 幸子 - 笑わせて泣かせて二度と会えぬ人妣(はは)の表札ゆっくり外す
広島県広島市 高野 和子 - この人がまさかと思う小説の真犯人が兄に似ている
埼玉県所沢市 若山 巌 - 生まれくる子の名明記の一葉が最後となりし戦地の便り
長野県飯田市 熊谷 よね子 - 鎮座する明治の祖父を思わせるハシビロコウは気配を消して
栃木県さくら市 大場 公史 - アカシヤの甘き風吹き札幌の市電はマスクつけて走りぬ
北海道札幌市 伏見 光子 - コンビニは輝く夜の水族館ひかりの中を客ら泳げる
長野県高森町 中島 正子 - 青虫もまどろめるらし街灯の光に見ゆる柔(やは)き拍動
東京都杉並区 岡﨑 咲弥 - 東雲が静かに夜明告げるころ種を蒔く人畝をひく人
長崎県諫早市 馬渡 壽人 - 芽吹きたる山を太らせ雨雲はゆるりゆるりと一村を過ぐ
山梨県都留市 渡邉 信子 - 一度だけ「雲の吸い上げ」を体験せりぐんぐん上がるパラグライダー
宮崎県宮崎市 松浦 淳 - 市役所は農業高校跡に建ち桜の花の雲におおわる
長野県塩尻市 丸山 健三 - 小児科の窓から見える春雲を母は神にもマシュマロにもする
茨城県つくば市 芳山 三喜雄 - 雲行きのあやしくなりゆく三歳児一人で泊まる初めての夜
愛知県名古屋市 江崎 ヤヨヒ - 字幕のない外国映画を観るように秋のいちにち雲と過ごしき
愛知県名古屋市 植田 和子 - ジャンダルムの突き上げくらう穂高岳にもくもく雲のソフト舐めたし
神奈川県川崎市 大和 嘉章 - 抱いてゆき畑にすわらせ草を取る病む猫と吾を知る秋の空
岐阜県下呂市 山内 朝子 - あの夏の海岸沿いの民宿のぬるいビールとひとひらの雲丹
長野県塩尻市 牧野 令
※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。