» 第38回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

第38回 全国短歌フォーラムin塩尻 入賞作品

第38回全国短歌フォーラムin塩尻入賞作品を発表します!
全国から1,570首のご投稿をいただきました。誠にありがとうございました。

最優秀作品

  • とりあえず一回親になってみるぶっきらぼうな妊娠報告
                       群馬県 沼田市 桑原 環世

    ▲評 永田 和宏
    妊娠したと娘からの知らせ。親にとっては何より大切な知らせだが、それにしても、なんともぶっきらぼうな言い草にあきれる思いか。それでもそわそわと嬉しい。

 

  • 給食着五分前には身につけてまっすぐ並ぶ五月の一年生
                       長野県 松本市 成沢 怜乃
    ▲評 佐佐木 幸綱
    初めての給食に、期待し緊張する小学一年生をうたったユニークな一首。取材感覚が抜群です。「まっすぐ並ぶ」は特にうまい。六月にはもう変わっているのでしょう。

優秀作品

  • 君が待つ坂の下へと踏みこめばペダルは雲のようにやわらか
                       東京都 世田谷区 川上 真央
    ▲評 小島 ゆかり
    坂の下で待つ君へと、心も体もやわらかくときめく。その感じを、踏み込むペダルの体感に託して表現したすばらしい一首。若いかけがえのない瞬間が、ゆたかな詩になった。
  • 翡翠(かわせみ)の写真送ると鷺や鴨グループLINEに野鳥犇(ひし)めく
                       京都府 宇治市 濱岡 学
    ▲評 佐佐木 幸綱
    野鳥好きの人たちのグループLINEです。カワセミ、サギ、カモなど、カラフルな野鳥たちを出して、楽しい映像を一首に溢れさせています。
  • 友だちを野球に誘った僕だからヘトヘトだけど宿題はする
                       京都府 舞鶴市 新谷 航大
    ▲評 小島 ゆかり
    友だちを野球に誘った自分が宿題をしていかないと、いいかげんなやつに思われそう。いっしょに野球をした友だちのためにもがんばろうという気持ちが、よくわかる。
  • 給油だとおどけて胃廔(ろう)を受ける父首から上で父を演(や)ってる
                       北海道 伊達市 中村 英俊
    ▲評 永田 和宏
    苦しい胃瘻のあいだも、「給油だとおどけて」見せる父。動くことももはやできないが、精一杯「首から上で父を」演じている姿が、子としてはなんとも切ない。
  • 暖簾下立ち食い蕎麦を啜る足交差立ちあり仁王立ちあり
                     東京都 杉並区 井芹 純子
    ▲評 小島 ゆかり
    立ち食い蕎麦を啜る人たちの足に注目した、ユニークな作品。「交差立ち」「仁王立ち」それぞれの人の性格まで見えるようでおもしろい。簡潔なリズムが、歌を生かした。
  • 「I love you」和訳は父がカニの身をすべてほぐして母に言う「食べな」
                       長野県 塩尻市 小澤 奈央
    ▲評 永田 和宏
    自分の思いを素直に口にできないぶきっちょな親父。カニの身を丁寧にほぐして、ただひと言「食べな」。それが精いっぱいの父の「I love you」であることは、娘にはよくわかる。

入選作品

  • 魂(たま)のような息を吐きつつ老いし父が凍(しば)れの底で通院バス待つ
                       北海道 伊達市 中村 英俊
    ▲評 小島 ゆかり
    「魂のような息を吐きつつ」という思い切った表現が、下句の具体的な場面によって生かされた。「凍れの底」でなんとか日々を生きようとする父の姿が、厳しく胸に迫る。
  • 三万の海猫(ごめ)の渡り来菜の花の盛る蕪島ゆるがすがに鳴く
                       青森県 八戸市 遠瀬 信子
    ▲評 佐佐木 幸綱
    蕪島は、青森県八戸市に属する島。ウミネコの繁殖地として、国の天然記念物に指定されているとのこと。三万もの海猫の声をクローズアップした下句、うまい。
  • 街角の露地を入ればカラタチの匂するなり武家屋敷跡
                       埼玉県 川越市 田中 恵美子
    ▲評 佐佐木 幸綱
    街からちょっと露地を入ったところに、「武家屋敷跡」という別世界が広がっているのでしょう。その非日常性を表現して「カラタチの匂」が、うまい。
  • 「晩春」や「初秋」の語彙が使えないいきなりの夏いきなりの冬
                       東京都 葛飾区 上原 厚美
    ▲評 小島 ゆかり
    だれもが感じている気候の変化を、独特の詩情をもって表現した一首。「いきなりの夏いきなりの冬」にリアルなインパクトがある。リズムの緩急も見事。
  • 三田線に乗りつつ今日も聞き違ふ「次は天国お降りの方は」
                       東京都 板橋区 廣瀬 千惠子
    ▲評 永田 和宏
    うとうとと寝ていて「次は天国」などと放送があれば、驚いて飛び起きそう。もちろん三田線に天国はない。「千石」があるが、まことに紛らわしくも、おもしろい。
  • 「おうちかえろうー」べそかく声も入りおり娘(こ)よりの蛍狩りの動画に
                       神奈川県 横浜市 堀 亜紀
    ▲評 佐佐木 幸綱
    スマホで撮って送って来た蛍狩りの動画に、お孫さんのべそをかく声も入っていたのです。楽しそうな仕上がりになっている点に、注目しました。
  • 君と見た月を鞄に入れたまま揺蕩う海月をひとり見ている
                     長野県 塩尻市 青木 久枝
    ▲評 小島 ゆかり
    君との記憶に捉われる心理を、「君と見た月を鞄に入れたまま」と斬新な感覚で表現して、詩的な拡がりがある。君への思いゆえの孤独が「揺蕩う海月」に重なり、余剰をもたらす。
  • AIに生成させた”青春”に君のまつ毛の影が足りない
                     長野県 松本市 青山 志織
    ▲評 永田 和宏
    生成AIは、絵まで見事に描いてくれる。“青春”として、君の面影を描かせたのだろう。とてもうまいのだが、「まつ毛の影が」描き切れていない。がっかりもし、また少し安心もしたはず。
  • あったのになかったことであふれてる打上花火を連写する指
                     長野県 松本市 上嶋 晴美
    ▲評 小島 ゆかり
    「あったのになかったことであふれてる」は、世界への日常への強い違和感のメッセージだろう。華やかに開いては消える打ち上げ花火を連写する多くの指、そして自分の指。
  • 闇のなか起きてゐるらし瓶の百合眠れぬ吾に香を送り来る
                       長野県 塩尻市 橘 雅子
    ▲評 小島 ゆかり
    眠れない夜のナイーブな神経が、「闇のなか起きてゐるらし瓶の百合」というシュールな感覚を呼び覚ました。百合の香がまるで、声なき声のようで魅力的である。
  • 母親から会社員になるニ十キロがわたしに必要ハンドル握る
                       長野県 岡谷市 増澤 仁美
    ▲評 永田 和宏
    慌ただしく朝飯を食わせて子どもたちを送り出し、それから会社員としての私がスタート。その切り替えに「二十キロ」の距離が必要なのだと詠う。実感がある。
  • アメリカに単独旅行した頃の私の胸には黒豹がいた
                       長野県 泰阜村 松島 房子
    ▲評 佐佐木 幸綱
    若かった時代の自身について「私の胸に黒豹がいた」と表現した部分が核になっている一首。自身の青春時代の内部の衝動や冒険心をうまく客体化した一首。
  • 左膝手術をおえて三月(みつき)ぶりなじみのカフェへの階段のぼる
                       岡山県 岡山市 山田 三津子
    ▲評 佐佐木 幸綱
    下句「なじみのカフェへの階段のぼる」の表現がいいですね。上句の「左膝」「三月ぶり」等の表現の具体性が、下句を活かしています。
  • 夏休みに帰り来し孫のリュックからオッペンハイマーの本のぞきおり
                       山口県 岩国市 西村 博子
    ▲評 永田 和宏
    久しぶりに帰省をした孫。昔のままの気分でいたが、ふと見るとオッペンハイマーの本が覗いている。ああ、いつの間にかこんな本を読むようにまで成長したのかと。
  • ひとりだけパンツスーツでうつむいて歩く人あり 振袖のなか
                     香川県 善通寺市 石井 啄也
    ▲評 小島 ゆかり
    「パンツスーツでうつむいて歩く」人の姿が少し痛々しく眼に浮かぶ。個人の事情はわからなくても、一人孤独を抱えているような、その人を思いやる気持ちが伝わってくる。
  • 「くうねる」と名付けて九年のわが猫はねだる仕種に磨きをかける
                       北海道 旭川市 柊 明日香
    ▲評 佐佐木 幸綱
    落語の「寿限無」に出てくる「食う寝るところに 住むところ」の「くうねる」を猫の名前にした面白さ。「わが猫は」以下の展開もなかなか、と感心しました。
  • 銀の鮪ナイフで椿のひとひらへ変えるマジシャン働くスーパー
                       茨城県 阿見町 萩原 瑞葵
    ▲評 佐佐木 幸綱
    短歌にマジシャンが出てくるだけでも珍しいのに、このマジシャンはスーパーにいるのです。驚きました。上句、表現があくまでも具体的で、よく。
  • ミツバチの一生分の仕事なりひとさじかけて命をもらう
                       茨城県 潮来市 堀内 道子
    ▲評 永田 和宏
    ミツバチが一生で集められる蜜はスプ-ン一杯分と言われる。当たり前のようにヨーグルトなどにかけていただくが、それは即、ミツバチの一生をいただくことにもなるのだと。
  • 夕食は何食べたいかと聞く我にトンカツと云う昭和の息子
                       埼玉県 川越市 神田 悦子
    ▲評 小島 ゆかり
    なるほど、平成や令和の息子なら他のメニューを言うかもしれない。「トンカツ」が家庭のごちそうであった昭和世代の息子。「夕飯は何食べたいか」はどこか普遍的な言葉だ。
  • ぬっと踏む泥田のぬくみよみがえる田舎から来た新米食めば
                       神奈川県 横浜市 谷口 菜月
    ▲評 小島 ゆかり
    米どころの田舎(ここでは故郷だろう)で、かつて農作業の手伝いをしたことがあるにちがいない。ヌ音の重なりや「泥田」のひびきが、その場面をリアルに伝えている。
  • 遅刻しちゃう娘見送り朝ごはん置いてきぼりの小さなおにぎり
                       長野県 塩尻市 赤羽 明恵
    ▲評 佐佐木 幸綱
    朝、娘さんを送り出した母親の一首。下句から見て、まだ娘さんは小学生だろうと読みました。下句、「置いてきぼりの小さなおにぎり」がいいですね。
  • 食べ終へし御飯茶碗に白湯を飲む父母思ひわれもまた飲む
                       長野県 長野市 宇都宮 英子
    ▲評 小島 ゆかり
    お茶碗にご飯粒を残さないための、食後のお腹をなだめるための先人の知恵なのだろう。慎ましくもなつかしい父母の姿。「われもまた飲む」に言葉を超えた思いがにじむ。
  • 締切日腕(かひな)は別の動きをすパン持つ左手(ゆんで)右手(めて)は鉛筆
                       富山県 富山市 山中 美智子
    ▲評 佐佐木 幸綱
    仕事上の締切日がある作者の一首。鉛筆で原稿を書き上げるようで、図や絵を描く仕事かもしれません。下句、左手(ゆんで)右手(めて)という古い表現をあえて使って成功。
  • 母さんの弁当茶色で不味かったと息子よ本音を真顔で言うか
                       石川県 金沢市 杉田 順子
    ▲評 永田 和宏
    感謝を素直に口にできない息子。昔からそうだったのだが、よりによって弁当が不味かったなどと真顔で言うとは。母は息子の反対の気持ちはわかりつつ、これも怒ってみせたのだろう。
  • ぎこちなく抱きしめられて月食も広義で言えばあなたのことだ
                       愛知県 名古屋市 遠藤 雄介
    ▲評 永田 和宏
    月食というのは、明るい月が影の部分を抱きしめる形でもある。月食のように「ぎこちなく」抱いてくれるあなた。このまま食が終わらないで欲しいと願う。
  • 足腰が弱った母も厨では卓球選手のようなステップ
                       大阪府 大阪市 藤真 那智

    ▲評 佐佐木 幸綱
    ふだんは「膝が痛い」などとこぼしていても、台所では元気なのです。「卓球選手のようなステップ」が表現も軽快で、見事です。
  • バター焼きの鮑を食べて魚偏が食になるまで食べまくりたい
                       島根県 江津市 三浦 秀和
    ▲評 永田 和宏
    謎解きの一首。鮑の魚偏を食に変えると、すなわち「飽きる」となる。要するに飽きるまで、この旨い鮑を食いたいという、まあ能天気な歌!おもしろい。
  • お代りを三杯する子の頼もしくスタッフ喜ぶ地域食堂
                       岡山県 岡山市 芦田 美代子
    ▲評 永田 和宏
    二杯までならまだしも、堂々と三杯目のお代わりを頼む子がいる。呆れながらもスタッフみんながそれを喜ぶのが「地域食堂」ならではなのだろう。
  • 廃線の駅は喫茶店になり駅長室にコーヒー香る
                       香川県 丸亀市 寒川 靖子
    ▲評 佐佐木 幸綱
    廃線になった電車や列車の駅が再生されたのです。下句「駅長室にコーヒー香る」が印象的で、すぐ憶えてしまいそうですね。
  • 野火の跡やうやう覆(おほ)ふ若草を肥後の赤牛明けの野に食む
                       大分県 別府市 佐藤 信二
    ▲評 小島 ゆかり
    野焼きの跡に若草が芽生える。それを赤牛が食べる。自然のめぐりのなかで生きる人の営為と牛の命の姿が尊い。「肥後の赤牛」「明けの野」など言葉に力がある。

奨励賞

  • 「きみが無事で元気ならよし」電話ごしココアのやうなその声に泣く
                       福島県 いわき市 大谷 湖水
  • 娘(こ)のオモチャ納戸より出し孫を待つ黒電話あるシルバニアハウス
                       栃木県 宇都宮市 染宮 千美
  • 駅ピアノ「ポロン」と鳴らし幼子はにっこり笑顔で椅子から下りる
                       群馬県 高崎市 野口 啓子
  • 元気よと君に言わせてしまった僕の弱さだけがあの日のまま
                       埼玉県 三郷市 I
  • 仕事するはずだった今日ツイッター見たら子猫の写真ばかりだ
                       埼玉県 上尾市 Spiga Fabrizio
  • 誰からも見られ続ける病院の秘密を持てぬ水槽の鯉
                       千葉県 市川市 秋山 典子
  • 「保育園に遅れちやいます」子が父を促してゐる花の下道
                       東京都 杉並区 岡崎 志昂
  • 裏庭に無花果実りふっくらと乳房の張りと厭いし若き日
                       東京都 杉並区 水井 道子
  • 身罷りし父の棺をリヤカーにて焼き場まで行きき麦畑のなか
                       東京都 日野市 岩崎 正
  • 毛虫焼く女になつてしまつたと寂し気に言ふ僕のマドンナ
                       神奈川県 厚木市 北村 純一
  • 馬追いもまいまいつぶりも見たことがない子を何処に連れてゆこうか
                       神奈川県 川崎市 星 陽子
  • 満天の星をかき分け落ちる雪この激しさはきっとあなただ
                       神奈川県 横浜市 谷口 菜月
  • 漆器祭孫の数だけお椀買うパステルカラーは今年の新作
                       長野県 塩尻市 大塚 智子
  • 啓蟄の六日はたしか地久節わかる世代と湯を浴びてをり
                       長野県 塩尻市 黒澤 登喜子
  • カッコーの声が聞こえるお隣りのこんもり繁るくるみの大木
                       長野県 下諏訪町 髙木 和子
  • 四十雀やまがら達が飛んで来て遊んでくれる一人の吾と
                       長野県 塩尻市 中神 元子
  • 木喰の聖刻みし阿弥陀さまシャロームと書く折鶴を掌に
                       長野県 安曇野市 矢花 彪二
  • 口下手な僕の話にあまりにも眩しい瞳をさらす小三
                       長野県 塩尻市 藤森 円
  • ぎんなんの地雷原なり子どもらが桂馬の軌道で駆ける公園
                       長野県 松本市 三井 基史
  • 子を忘れ思い出を捨て死ぬ時を選べぬ母は恙無く居る
                       岐阜県 飛騨市 江尻 恵子
  • 風強き海辺の職場の窓すべて開け放ちたい青空である
                       三重県 津市 田中 亜紀子
  • 前だけを向いて走ったときは過ぎ散らした塵を掃きつつ歩く
                       京都府 京都市 髙橋 よしこ
  • ブラインドの紐を引いたら春になり黄砂のかかった街が一枚
                       大阪府 岬町 岡野 はるみ
  • 正解を選んで生きる?私なら選んだことを正解にする
                       和歌山県 和歌山市 中尾 加代
  • ゆったりと踏み切り渡るさくら猫のモンローウォークに見とれていたり
                       徳島県 小松島市 山﨑 泰子
  • ビール手に爺さん孫に焼肉を「食べろ食べろ」と焼きもせぬのに
                       北海道 札幌市 中原 美代子
  • 阿房宮摘みて手伝いし幼な子が花食べ花の香に眠るなり
                       青森県 八戸市 小野 一男
  • そのふたでかくして食べたとおい日の麦めしたくあんだけのべんとう
                       青森県 野辺地町 山田 摂
  • 小麦粉と片栗粉とが混じるごと選り分けられぬ感情を食ぶ
                       埼玉県 さいたま市 三石 敏子
  • 両の手も足も食べ出す赤ん坊神のひかりを握った指だ
                       東京都 練馬区 稲山 博司
  • いまだ死語に非ず「栄養失調」の子らを救わん子ども食堂
                       東京都 葛飾区 上原 厚美
  • 先人の犠牲なしにはあり得ない美味いきのこのを食める喜び
                       東京都 渋谷区 せんとおん
  • 五百キロくらいは誤差で電話越し君と見ていた夏の月食
                       東京都 練馬区 仲原 佳
  • 棚に荷を上げてくれたる青年の横でしずしず駅弁を食む
                       神奈川県 横浜市 北見 美保
  • 死ぬ前にも一度食べたし安曇野の十割蕎麦の固き喉越し
                       神奈川県 川崎市 和田 修子
  • わが町の「おひさま食堂」朝七時味噌汁の香と笑顔に開く
                       山梨県 山梨市 埜村 和美
  • 金環日食をいっしょに眺めた一年生二十歳(はたち)になったと知らせの届く
                       山梨県 北杜市 坂本 千津子
  • 虫食いが少しのキャベツ送ります父さんもまだ頑張ってるよ
                       長野県 阿智村 北原 明倫
  • ハサミ持ちパチンと切ったナイアガラとりたての味五倍おいしい
                       長野県 塩尻市 佐藤 奏太
  • 楽しみに冷やしておいた焼プリンを食べた犯人がこの中にいる
                       長野県 安曇野市 茅野 勇史
  • モーツアルトを聴きつつ牛の餌を食み牛舎の寒気にはかに動く
                       長野県 安曇野市 矢花 彪二
  • 八冠の対戦相手が誰かより食べるおやつが気になっている
                       静岡県 静岡市 栗山 太一
  • 何たって川原で焼いた夏一番仲間と食らう鮎の塩焼
                       愛知県 東海市 久野 てる子
  • 亡姉に倣い甥から届くクール便やわき筍山椒を添えて
                       愛知県 東郷町 三宅 純子
  • 乗り継ぎのわづかな時間駆け込みてかけそばを食ふふる里の駅
                       三重県 四日市市 中山 秀子
  • 人生を九十までと仮定をし食事の回数かぞえてる友
                       大阪府 大阪市 川田 ゆかる
  • 解凍してひとつを食ぶ夕焼けが落していったようなあんぽ柿
                       大阪府 吹田市 冨田 織江
  • 夫と子とノートルダムの塔の側焼き栗喰めば巴里の味する
                       大阪府 堺市 名川 由江
  • 「もういいの」「も少し食べる」「偉(えら)いなあ」食事介助はこの繰り返し
                       和歌山県 和歌山市 松田 容典
  • 飼い猫がマムシをくわえ帰り来て酒に漬けたよ友平然と
                       岡山県 岡山市 住田 久代
  • 透明の壜に飾られ食用のコオロギ、バッタ宝石めきて
                      福岡県 糸島市 瀬戸口 真澄
  • 川岸の製糸会社に職を得て初めて食べた鯉や野沢菜
                       大分県 大分市 式田 昭二
  • 食べるなら食べてもみよと方丈の蓋蹴飛ばせりうどんすきの海老
                       アメリカ合衆国 小守 くるみ

※短歌に関しましては、原稿を忠実に掲載することを基本といたしました。
ただし、ホームページ上で表示できない文字(旧字体など)につきましては、表記を変更しております。ご了承ください。